SUS304の許容応力と計算手法

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大阪守口市にあるフィリール株式会社は、ステンレスのフライス加工に特化した金属加工会社です。

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目次

1: SUS304の概要と特性

1-1: SUS304とは?

SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼の代表格であり、JIS G4303に規定される材料です。耐食性と加工性のバランスがよく、配管・建材・厨房器具・医療機器など広範に使用されます。

1-2: SUS304の化学成分

主な構成元素は以下の通りです:

  • Cr(クロム): 約18%
  • Ni(ニッケル): 約8%
  • C(炭素)、Mn(マンガン)、Si(ケイ素)を微量含有

→ この18-8ステンレスという配合が、優れた耐食性・加工性を実現しています。

1-3: SUS304の機械的特性(代表値)

項目数値(参考値)
引張強さ520 MPa 以上
0.2%耐力(降伏点)約205 MPa
伸び(%)40%以上
硬度(HB)約180程度

1-4: SUS304の耐腐食性と熱特性

  • 耐腐食性:大気中や多くの化学薬品に対して安定
  • 耐熱性:使用温度範囲は最大870〜925℃まで対応可能(但し長時間使用は要注意)

2: 許容応力の基礎知識

2-1: 許容応力とは?

許容応力(Allowable Stress)とは、構造物に外力を加えたときに安全に使用できる応力の上限値です。
→ 材料の強度に安全率を掛けて求める設計指標です。

2-2: 許容応力の重要性

許容応力を超えると、部材の変形や破壊のリスクが高まり、設計不良となる恐れがあります。したがって、構造物や機械部品の安全性・信頼性確保に不可欠です。

2-3: 許容応力の種類

  • 許容引張応力
  • 許容圧縮応力
  • 許容せん断応力
  • 許容曲げ応力

これらは用途や設計法に応じて選定されます。

2-4: 許容応力と安全率の関係

許容応力は以下の式で求められます:

許容応力 = 材料の強度 ÷ 安全率

安全率は設計条件により異なり、通常1.5〜4程度が用いられます。


3: SUS304の許容応力度

3-1: 許容引張応力の定義

引張荷重を受ける部材において、SUS304の引張許容応力(σt)は次のように設定されます:

σt ≒ 130〜150 MPa(用途により変動)

※JIS B8265(圧力容器設計基準)などの基準に準拠することも多いです。

3-2: 許容曲げ応力の算出

SUS304の許容曲げ応力(σb)は、引張強度や降伏点から以下のように求められます:

σb ≒ 160〜180 MPa(設計基準により補正)

板厚や支持条件、部材形状により補正係数を掛ける必要があります。

3-3: 降伏応力の特性と数値

降伏応力とは、永久ひずみが残り始める応力であり、SUS304では以下のようになります:

降伏点(0.2%耐力) ≒ 205 MPa

許容応力設定時には、この値に基づき安全率を考慮します。

3-4: SUS304に対する基準強度

強度項目数値例(設計参考)
許容引張応力130〜150 MPa
許容曲げ応力160〜180 MPa
許容せん断応力約90〜100 MPa
降伏応力約205 MPa(0.2%耐力)
引張強さ約520 MPa

SUS304は耐腐食性に優れる一方で、機械構造材としては強度が比較的低めです。そのため、許容応力を設定する際には、安全率の吟味と使用環境の確認が不可欠です。設計基準や用途に応じて、保守的な応力設定が推奨されます。

4: 計算方法の基本

4-1: 許容応力の計算手法

許容応力は、以下のように材料の強度に対して安全率を掛けて求めます:

許容応力 = 強度特性 ÷ 安全率

例:SUS304の引張強さ520MPa、安全率3を仮定した場合

例:SUS304の引張強さ520MPa、安全率3を仮定した場合

許容応力 = 520 ÷ 3 ≒ 173 MPa

→ 安全率は用途・荷重・使用環境により変動し、1.5〜4程度が一般的です。


4-2: 曲げ応力の計算式

曲げ応力は以下の式で算出されます:

σ = M / Z

  • σ:曲げ応力(MPa)
  • M:曲げモーメント(N·mm)
  • Z:断面係数(mm³)

SUS304を使用した梁部材などの設計検討に頻用される式です。


4-3: 引張応力の計算方法

引張応力は次の基本式を用います:

σ = F / A

  • σ:引張応力(MPa)
  • F:引張荷重(N)
  • A:断面積(mm²)

部材断面が一定の引張部品の強度確認に適しています。


4-4: 応力-ひずみ曲線の利用

SUS304の応力-ひずみ曲線は、設計と材料選定に重要なデータです:

  • 弾性域:応力に比例して伸びる
  • 降伏点:0.2%耐力 ≒ 205MPa
  • 破断点:520MPa前後

耐力点を超える前に使用荷重を抑える設計が基本です。


5: 設計への応用

5-1: SUS304を用いた部品設計

SUS304は次のような部品で多用されます:

  • 配管部品
  • ボルト・ナット
  • カバー・ブラケット

→ 引張・曲げ・せん断に対する許容応力を超えないよう寸法を設計します。


5-2: 構造物における許容応力の考慮

SUS304を構造物に用いる場合、以下の検討が必要です:

  • 応力集中の有無
  • 溶接部の強度低下
  • 接合部のボルト強度と座屈検討

→ 全体構造に対する負荷分散設計と安全率の確保が求められます。


5-3: 高温環境での設計考慮点

SUS304は耐熱性に優れますが、高温下では強度が低下します:

温度(℃)許容応力(MPa)※参考
100約170
300約135
500約90

→ 使用温度に応じた高温強度評価が必要です。


5-4: 金属加工における注意点

  • 加工硬化により機械加工性が低下
  • 切削油の使用で工具寿命延長
  • 穴あけや溶接後の応力除去処理が有効

→ 加工後の残留応力が構造に影響する場合、熱処理やショットピーニングで対策します。


6: 実験と試験

6-1: 許容応力の試験方法

  • 引張試験:JIS Z2241に準拠
  • 圧縮試験:部材の変形挙動を評価
  • 曲げ試験:三点・四点曲げによる測定

→ 実際の部品寸法や溶接部などで現物評価も必要です。


6-2: 機械試験による強度評価

  • 万能試験機による引張・圧縮・曲げテスト
  • 硬さ試験(HB, HV, HR)も併用
  • 試験体はJIS準拠の標準試験片を使用

6-3: 応力測定の手法

  • ひずみゲージ法:応力分布を面で可視化
  • X線残留応力測定:非破壊での表面応力評価
  • 有限要素解析(FEM):実測困難な応力も数値解析で可視化

6-4: 疲労試験による安全性評価

  • SUS304は疲労強度が母材の引張強度の約40〜50%
  • 試験では以下を確認:
  • S-N曲線(応力-繰返し回数)
  • 疲労限度
  • 溶接部・応力集中部の影響

→ 設計耐用年数を考慮した疲労寿命の評価が安全性確保に不可欠です。

7: SUS304の利用実績

7-1: 産業界での使用例

SUS304はその高い耐食性と強度、加工性から、多くの産業分野で広く利用されています。

  • 化学プラント:反応容器、配管部材
  • 自動車部品:排気系パーツ、ヒートシールド
  • 電子機器:筐体部品、遮蔽ケース

→ 酸性・アルカリ性環境下でも長寿命で腐食しにくいため、設備のメンテナンス頻度を削減できます。


7-2: 建築における採用事例

SUS304は意匠性と耐久性を活かして建築分野でも多数採用されています。

  • 外装材・屋根材:風雨・紫外線に強く、光沢を維持
  • 手すり・階段部材:耐摩耗性と安全性を確保
  • 構造体の補強部材:高強度・溶接適性が高い

→ メンテナンス性と景観性に優れ、公共建築や高層ビルでも活用されています。


7-3: 食品業界への適用

SUS304は食品衛生法に適合し、食品分野でも標準的な材料です。

  • 食品加工機械:洗浄性・腐食耐性に優れる
  • タンク・パイプ:酸・塩分を含む液体への耐久性
  • 厨房機器:シンク、調理台、器具のフレーム

→ 無害で腐食に強く、衛生管理と耐久性の両立が可能です。


7-4: その他の用途と利点

SUS304は、その他にも以下のような分野で活用されています:

  • 医療機器:器具・装置部品(オートクレーブ対応)
  • 船舶・海洋構造物:塩水環境下でも高耐食性
  • 日用品・雑貨:水回り製品、装飾品、時計

用途の広さ=材料としての信頼性と安定供給の強さが背景にあります。


8: SUS304の加工方法

8-1: フライス加工の技術

SUS304のフライス加工では、加工硬化と熱の蓄積が大きな課題です。

  • 低速・高送りが基本(加工硬化を避ける)
  • 超硬工具やコーティング工具(TiAlNなど)が有効
  • 湿式加工+高圧クーラントで刃先冷却・切りくず排出を両立

→ 工具寿命の延長と表面粗さの改善には、切削条件の最適化が不可欠です。


8-2: せん断加工とその特性

せん断加工(シャーリング、プレス)は厚板加工や量産部品に向いています。

  • 加工硬化が生じやすく、バリが出やすい
  • 刃物の材質(高速度鋼や粉末ハイス)選定が重要
  • クリアランス調整が精度と仕上がりを左右

→ SUS304の延性と靭性を活かしながら、刃物摩耗と変形を抑えることがポイントです。


8-3: ねじ加工時の注意点

ねじ切り(タップ加工)では、ねばり強さによる工具破損リスクがあります。

  • 切削タップではなく転造タップが適する場合も
  • ステンレス用タップ(スパイラル溝や特製ネジ山)の使用
  • 充分な切削油供給(エステル系や硫黄系添加剤入り)

→ 「ねじ山つぶれ」「焼き付き」防止には、加工熱と切りくず排出の管理が不可欠です。


8-4: 加工時の温度管理の重要性

SUS304は加工中に熱を持ちやすく、加工硬化や工具摩耗の原因になります。

  • 高温により材料強度が上がり切削抵抗が増加
  • 刃先のなまり・摩耗を誘発
  • 冷却不足で仕上げ精度が低下

対策:

  • 高圧クーラントの使用
  • 適切な切削速度と送りのバランス調整
  • 熱がこもりにくい工具設計の採用

温度制御の有無が、製品精度と加工コストに直結します。



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