SUS420J1の硬度測定方法を徹底解説

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大阪守口市にあるフィリール株式会社は、ステンレスのフライス加工に特化した金属加工会社です。

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目次

1: SUS420J1とは何か?

1-1: SUS420J1の特性と用途

  • マルテンサイト系ステンレス鋼の一種で、高硬度かつ耐摩耗性に優れる
  • 耐食性は一般的なSUS304より劣るが、刃物や医療機器、カッターなど硬さが求められる用途に広く使われる
  • 熱処理により硬度を調整可能で、用途に応じて強度や靭性を最適化できる

1-2: SUS420J1と他の材質の違い

  • SUS304などのオーステナイト系ステンレスより硬度が高いが、耐食性は低め
  • 一般的な炭素鋼より耐食性が良く、マルテンサイト系としては扱いやすい加工性が特徴
  • SUS420J2などの他のマルテンサイト系鋼種と比べ、炭素含有量が若干低く、硬度調整がしやすい

1-3: マルテンサイト系ステンレス鋼の理解

  • 炭素含有により焼き入れ硬化が可能なステンレス鋼の分類
  • 硬化後は強度・硬度が非常に高く、刃物や工具材として重要視される
  • 一方で耐食性はオーステナイト系より劣り、用途に応じた表面処理や保護が必要

1-4: SUS420J1の成分分析

  • 主成分: クロム(Cr) 約12~14%、炭素(C) 約0.15~0.25%
  • その他:マンガン(Mn)、シリコン(Si)、リン(P)、硫黄(S) など微量元素
  • クロムによる耐食性付与と炭素による硬度調整のバランスが特徴

2: 硬度測定の基本

2-1: 硬度とは何か?

  • 材料の硬さ、すなわち外部からの変形・傷つきにくさを示す指標
  • 押し込み深さや圧痕の大きさなどで評価される物理的特性

2-2: 硬度が重要な理由

  • 耐摩耗性や耐久性の判断材料として不可欠
  • 加工や使用環境での性能を左右し、品質管理の基本となる

2-3: 測定方法の種類

  • ロックウェル硬さ試験(簡便で広く使われる)
  • ビッカース硬さ試験(微小部品や薄板向け、荷重調整が自由)
  • ヌープ硬さ試験(薄膜や表面硬度測定に適す)
  • ブリネル硬さ試験(粗い表面の硬さ測定に利用)

2-4: 硬度と耐摩耗性の関係

  • 硬度が高いほど摩耗に強く、刃物や工具の寿命延長に繋がる
  • ただし、硬度だけでなく靭性とのバランスも重要で、硬すぎると割れやすい

3: SUS420J1の硬度測定方法

3-1: ロックウェル硬さ試験

  • ダイヤモンド円錐または鋼球圧子を用い、圧痕深さから硬さを評価
  • 試験時間が短く、工場現場での品質管理に適している

3-2: ビッカース硬さ試験

  • 正四角錐形のダイヤモンド圧子を用い、圧痕の対角線長さを測定
  • 微小領域や薄い材料の硬度測定に向く

3-3: ヌープ硬さ試験

  • ビッカースに似るが、より小さな荷重を用い薄膜や表面硬度評価に使用
  • 複雑な表面の硬さを詳細に分析可能

3-4: ブリネル硬さ試験

  • 粗い表面や大型材料の硬度評価に適している
  • 大きな鋼球または硬質合金球を押し付けて圧痕径を測定

4: 測定時のポイント

4-1: 試料の準備と条件

  • 表面は平滑かつ清浄でなければならず、研磨や脱脂処理が不可欠
  • 試験片の厚みは、圧痕が材料を貫通しない程度を確保する必要あり
  • 変形を防ぐため、試料はしっかりと固定し、安定した台に設置する

4-2: 荷重設定の考慮

  • 試験方法に応じた適切な荷重選定が重要(例:ビッカース法は数gf〜数kgf)
  • 材料の厚みや性質に応じて過大・過小荷重を避ける
  • 過剰な荷重は圧痕が大きくなりすぎて測定誤差の原因に、逆に小さすぎると不正確な圧痕形成に

4-3: 深さと圧痕の理解

  • 圧痕の深さや形状は硬さを決定づける重要要素
  • 圧痕が歪んでいる場合、圧子の摩耗や不均一荷重が疑われる
  • ビッカース法やロックウェル法では、圧痕の正確な読取が信頼性を左右する

4-4: 環境要因の影響

  • 室温の変化や振動、湿度などが測定結果に影響を与える場合がある
  • 測定器は定期校正を行い、使用前にゼロ点確認を実施
  • 試料の温度変化にも留意(測定は常温安定後に行うことが望ましい)

5: 熱処理と硬度の関係

5-1: 焼入れの原理

  • 急冷によりマルテンサイト相を形成し、硬度を大幅に向上させる処理
  • SUS420J1では油冷または空冷が一般的で、焼入れ温度は約950〜1050℃
  • 焼入れ前の保持時間や冷却速度により硬度と靭性のバランスが決まる

5-2: 調質処理の影響

  • 焼入れ後の焼戻しにより応力除去と靭性回復を図る
  • 焼戻し温度と時間の調整で、所望の硬さと耐久性を得ることが可能
  • 過度な焼戻しは硬度低下の原因になるため、用途に応じた温度選定が重要

5-3: 加工後の硬度変化

  • 切削や研磨などの機械加工により表面に加工硬化が生じることがある
  • 熱が加わる加工では逆に表面軟化や酸化の可能性がある
  • 加工前後での硬度測定により、製品の品質安定性を確認することが推奨される

6: 実用的なアプリケーション

6-1: 刃物などの工具用途

  • 高硬度と耐摩耗性が求められる刃物や工具に最適
  • 包丁、はさみ、カッター刃、機械工具など幅広く使用されている
  • 熱処理で得られる高硬度が切れ味と耐久性を支える

6-2: 医療器具への応用

  • 手術用ハサミやメスなど、清潔性と耐久性を両立する用途に適合
  • 耐食性と高硬度のバランスにより繰り返し滅菌にも対応可能
  • 高精度な硬度制御が品質・安全性を確保するカギ

6-3: 金属加工における選定基準

  • 摩耗が激しい環境では、SUS420J1のような硬質材が長寿命を実現
  • 溶接性は低いため、加工工程や組立方法の設計段階で配慮が必要
  • 硬度と靭性の最適バランスを見極めた材料選定が重要となる

7: 硬度測定の精度向上

7-1: 技術的な注意点

硬度測定の信頼性を確保するには、試験の各工程での技術的な注意が欠かせません。まず、圧子の摩耗や変形は測定誤差の原因となるため、定期的な点検と校正が必要です。試験片の表面が平滑であること、傾きがないことも重要です。さらに荷重の加え方や保持時間のばらつき、圧痕の読み取り精度といった点にも注意しなければなりません。測定者のスキルによっても誤差が生じる可能性があるため、訓練と標準操作の徹底が精度向上につながります。

7-2: 設備と測定器の選び方

測定対象となる材料の性質や形状に応じて、適切な硬度計を選定することが基本です。ロックウェル硬さ計は操作が簡便で再現性が高く、実用的な試験に適しています。一方、微細部の測定にはビッカース硬さ計やヌープ硬さ計が適しており、高倍率の顕微鏡による観察が必要です。試験頻度が高い現場では、自動化された硬度計の導入が作業効率を高め、データの安定性にも寄与します。いずれの装置においても、国際規格に準拠した性能であることが前提となります。

7-3: 実験条件の標準化

環境条件の変動は硬度測定に予想外の影響を与えることがあります。室温や湿度の変化、振動の有無などが圧痕形成に影響し、ばらつきの原因となることがあります。そのため、測定環境をできる限り一定に保ち、条件の標準化を行うことが求められます。試験片の準備方法や荷重のかけ方、測定時間、読み取り方法などをマニュアル化し、工程全体のばらつきを抑制することが精度向上の鍵です。

8: SUS420J1の評価と選定

8-1: 選定時に考慮すべき要素

SUS420J1を材料として採用する際には、硬度の他に加工性、靭性、耐食性といった特性のバランスを考慮する必要があります。焼入れによって高硬度が得られる一方で、焼戻し温度や保持時間によって性能が大きく変化するため、使用条件に合致した熱処理条件を選定することが重要です。加えて、製品の用途や加工工程との相性、溶接性や後加工のしやすさも判断材料となります。

8-2: 性能比較と耐久性評価

SUS420J1は、同じマルテンサイト系のSUS420J2やSUS440Cと比較して、やや控えめな硬度ながらも、加工性とコストパフォーマンスに優れています。高温下での耐摩耗性や長期間の使用による摩耗挙動も安定しており、産業用途での信頼性が高い材質です。実環境における長期耐久性評価により、選定段階での判断材料が豊富であることも評価の一因となっています。

8-3: 市場での位置づけ

SUS420J1は、硬度と耐摩耗性に優れながらも加工性の高さを持ち合わせた材料として、市場では中核的な位置づけを占めています。刃物、医療機器、産業機械部品といった用途での採用が多く、信頼性とコストのバランスに優れた選択肢として重宝されています。特にマルテンサイト系ステンレスの中では、最も幅広い適用範囲を持つ素材の一つとして、今後も安定した需要が見込まれます。

9: 結論

9-1: 硬度測定の重要性のまとめ

SUS420J1の性能を最大限に引き出すには、正確な硬度測定が前提となります。硬度は材料の耐久性や摩耗寿命の予測、熱処理効果の確認など、さまざまな判断の指標として活用されるため、測定精度の確保は製品品質に直結します。適切な測定方法と条件の選定が、正しい評価へとつながります。

9-2: 今後の研究方向性

今後は、非破壊での硬度測定技術の進化や、AIによる自動判定技術の導入が進むことが予想されます。また、より微細な部位での硬度分布の評価や、材料のミクロ組織との相関分析による定量的な評価方法の確立も期待されています。こうした技術革新は、より精密な材料設計やプロセス最適化につながるでしょう。

9-3: SUS420J1を選ぶ理由

最終的にSUS420J1を選定する理由は、その高い耐摩耗性と適切な加工性、そして熱処理による性能調整の柔軟性にあります。コストパフォーマンスにも優れており、幅広い分野での活用が可能です。安定した供給と豊富な実績により、信頼性の高い材料として今後も選ばれ続けることが期待されます。

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