SUS304とSUS420J2の硬度比較を詳しく解説

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目次

1: SUS304とSUS420J2の硬度比較

1-1: SUS304の基本特性と硬度

SUS304は代表的なオーステナイト系ステンレス鋼で、耐食性と加工性に優れる非磁性材料です。

  • ビッカース硬度(HV):約160〜200
  • ロックウェル硬度(HRB):約85〜95

→ 焼入れによる硬化は難しく、加工硬化を利用した硬度向上が主流です。


1-2: SUS420J2の基本特性と硬度

SUS420J2はマルテンサイト系ステンレス鋼で、焼入れによって高硬度化できることが特徴です。

  • 焼入れ前:HRC 20〜25
  • 焼入れ後:HRC 48〜55(最大60前後)

→ 刃物、バルブ部品、軸受け部など、高硬度と耐摩耗性が求められる用途に適します。


1-3: 硬度の測定方法と比較基準

硬度は以下の方法で測定され、用途により使い分けられます。

  • ロックウェル硬度(HRB・HRC):一般機械部品に広く適用
  • ビッカース硬度(HV):微細部・試験片に有効
  • ブリネル硬度(HB):軟質材料に適用

→ SUS304とSUS420J2の比較には、同一基準(HRCまたはHV)での評価が不可欠です。


1-4: 焼入れの影響とプロセス

焼入れは、急冷によって硬化相を形成する熱処理です。

  • SUS304:オーステナイト構造のため、焼入れでは硬化しない(ただし冷間加工で加工硬化)
  • SUS420J2:焼入れによりマルテンサイト組織となり、大きく硬度が上昇

焼入れの適性は、結晶構造によって大きく異なる点に注意が必要です。


1-5: オーステナイト系とマルテンサイト系の違い

特性項目オーステナイト系(SUS304)マルテンサイト系(SUS420J2)
結晶構造FCC(面心立方格子)BCT(体心正方格子)
焼入れ性なし(加工硬化)あり(焼入れ硬化可能)
耐食性高い中〜やや低い
硬度特性柔軟性・延性重視高硬度・耐摩耗性重視

→ 材料選定では、用途に応じて「耐食性」か「硬度」かを重視することが重要です。


2: SUS304の焼入れによる硬度向上

2-1: 焼入れ方法の詳細

SUS304は基本的に焼入れによる硬度上昇が困難ですが、冷間加工や特殊熱処理で疑似的に硬化させる手法があります。

  • 冷間加工(圧延・引抜き):加工硬化により硬度向上
  • 窒化処理・イオン窒化:表面に硬化層を形成
  • ショットピーニング:表面残留応力で疲労強度と硬度を改善

2-2: 焼入れ後の硬度変化

冷間加工後のSUS304は以下のような硬度向上が見込めます:

  • 軟質材(アニール材):約180 HV
  • 冷間圧延材:250〜400 HV(加工率に依存)

→ 高硬度が必要な場合、全面ではなく表面処理や局所硬化が実用的です。


2-3: 処理温度の重要性

SUS304の結晶構造は高温でも変態しないため、通常の焼入れ(オーステナイト→マルテンサイト)は不可能です。

  • アニール温度:1000〜1100°C
  • 急冷により再結晶を防ぐ(ただし硬度向上はしない)

温度管理は耐食性保持には有効だが、硬度向上にはつながらないのが特徴です。


2-4: 冷却速度と硬度の関係

SUS304は急冷しても結晶変態を起こさず、常にオーステナイト組織を保持します。

  • 空冷でも水冷でも硬度変化はなし
  • 一方、加工硬化は冷却速度に依存せず発生可能

→ 焼入れによる硬度調整が難しいため、硬度が必要な部位には異材との複合化も検討されます。


3: SUS420J2の焼入れによる硬度向上

3-1: 特性と冷却方法

SUS420J2は、焼入れによってマルテンサイト組織に変態し、硬度が大幅に上昇します。

  • 焼入れ温度:980〜1050°C
  • 冷却:油冷または空冷(冷却速度が重要)

適切な冷却速度を確保することで、最大硬度(HRC 58〜60)に到達可能です。


3-2: 焼入れの影響と耐久性

焼入れによって得られる硬度は、耐摩耗性や耐久性に直結します。

  • 高硬度=刃物・摺動部・耐摩耗部品に最適
  • 焼戻しにより応力除去・靭性付与が可能(200〜400°C程度)

→ 焼入れと焼戻しの2ステップ処理が、最適な材料特性の発現につながります。


3-3: 硬度と耐摩耗性の関係

SUS420J2は高硬度≒高耐摩耗性を示します。

  • HRC 55以上で摩耗耐性が飛躍的に向上
  • 工具や刃物の寿命を延ばす
  • 表面処理(窒化・TiNコート等)でさらに強化も可能

→ 長寿命と高精度を求める用途では、SUS420J2+焼入れ処理の組み合わせが最適です。

4: 両素材の比較と選択基準

4-1: 用途ごとの最適選択

SUS304とSUS420J2は、特性の方向性が異なるため、用途に応じて明確な使い分けが必要です。

  • 耐食性を優先する場合:SUS304(厨房機器、化学設備、配管など)
  • 高硬度・耐摩耗性を重視する場合:SUS420J2(刃物、軸受、機械部品)

→ 「腐食環境に強いが硬くない材料」か、「硬いが腐食に弱い材料」かというトレードオフを理解することが重要です。


4-2: 表面処理技術と効果

両素材ともに、用途拡大や性能強化のために表面処理が活用されます。

SUS304の表面処理例

  • 電解研磨・パッシベーション処理:耐食性向上
  • ショットピーニング・窒化処理:表面硬化・疲労強度向上
  • PVDコーティング(TiNなど):意匠性・耐摩耗性

SUS420J2の表面処理例

  • 焼戻し後の窒化処理:さらに摩耗寿命向上
  • DLC・TiCNコーティング:工具・摺動用途に対応
  • 表面鏡面仕上げ:摩擦低減・汚れ付着防止

→ 表面処理の選定は、素材の特性補完と耐用年数の最適化に直結します。


4-3: 加工性と製造コストの比較

製品設計時には、加工性とコストのバランスも重要な判断材料です。

項目SUS304SUS420J2
切削加工性良好(ただし刃先摩耗注意)中程度(焼入れ前が加工しやすい)
溶接性非常に良好溶接性はやや難(焼割れ注意)
熱処理コスト不要(基本常温使用)焼入れ・焼戻しに追加工程必要
材料コスト比較的安価若干高め

大量生産やコスト重視の部品にはSUS304、機能性重視にはSUS420J2が適する傾向があります。


5: まとめ:SUS304とSUS420J2の硬度比較の重要性

5-1: 実用的な選択に向けて

SUS304とSUS420J2は、ステンレス鋼の中でも明確な機能差がある材料です。

  • 耐食性・成形性 → SUS304
  • 高硬度・耐摩耗性 → SUS420J2

→ 現場では、製品の用途・環境・耐久要件に基づき、明確に選定基準を設けることが重要です。


5-2: 今後の技術進展と可能性

近年では以下のような技術も進展しており、今後の素材活用の幅はさらに広がります。

  • SUS304へのレーザー焼入れや窒化処理の進化
  • SUS420J2の高靭性型(改良材)の開発
  • 異材複合技術(クラッド材やレーザー接合)によるハイブリッド化

→ 今後の材料開発や加工技術の進歩により、従来のトレードオフを打破する新しい選択肢が現れる可能性があります。


以上より、硬度を軸とした材料比較は、単なる数値の比較ではなく、「目的」「加工方法」「コスト」「耐久性」など総合的な視点から判断すべきであることが明らかです。

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