耐腐食性を比較!SUS316とSUS316Lの違い

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大阪守口市にあるフィリール株式会社は、ステンレスのフライス加工に特化した金属加工会社です。

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目次

1: SUS316とSUS316Lの基本的な違い

1-1: 成分の違い(炭素、ニッケル、モリブデン)

SUS316とSUS316Lはどちらもオーステナイト系ステンレス鋼で、主に以下のような成分差があります。

  • 炭素含有量
    • SUS316:最大約0.08%
    • SUS316L:低炭素仕様で最大約0.03%
      低炭素にすることで粒界炭化物の生成を抑制し、耐晶界腐食性を向上。
  • ニッケル・モリブデン
    • 両者ともにニッケル(約10~14%)とモリブデン(約2~3%)を含み、耐食性と耐孔食性を強化。

1-2: 強度の比較

  • SUS316は炭素含有量がやや高いため、機械的強度や耐熱強度がやや高い傾向。
  • SUS316Lは低炭素仕様のため、強度は若干低めだが、靭性が良く溶接後の性能低下が少ない

1-3: 耐食性の比較

  • SUS316Lは低炭素設計により、溶接部での晶界腐食や感応性腐食が起こりにくい
  • 一方、SUS316は溶接条件によっては晶界腐食のリスクがあるため、耐食性では316Lが優位。

1-4: 加工と溶接の特性

  • SUS316Lは低炭素ゆえに、溶接後の割れや腐食の発生が抑えられ、溶接加工に適している
  • SUS316は高温加工や熱処理に適するが、溶接時には注意が必要。

2: SUS316Lの耐海水性能

2-1: 耐海水性の特性

SUS316Lはモリブデン含有により、海水や塩水環境に強い耐孔食性を示すことが知られています。
特に、塩素イオンによる局部腐食に対して高い耐性を持つため、海洋構造物や船舶部品で広く利用されています。

2-2: 腐食試験の結果

  • 標準的な塩水噴霧試験(SST)や電気化学的腐食試験で、SUS316Lは長時間にわたり腐食の発生が抑制されることが確認されています。
  • 他のステンレス鋼に比べ、耐孔食指数が高く、海水中での耐久性が優れている

2-3: 海洋環境での使用例

  • 海底パイプライン
  • 船舶の排気管やデッキ装置
  • 海洋プラットフォームの構造部材

これらの用途で、SUS316Lは長期の耐久性とメンテナンス低減に貢献しています。

2-4: 期待できる耐久性

適切な設計と表面処理を施せば、SUS316Lは20年以上にわたる耐海水性能を発揮
ただし、激しい波浪や潮流、機械的応力が加わる環境では定期的な点検が重要です。


3: SUS316の耐食性の評価

3-1: 一般的な耐腐食性の特性

SUS316は耐酸化性・耐硫酸性など化学薬品に対する耐性が高く、食品加工機械や化学プラントで多用されます。
ただし、溶接後の晶界腐食リスクがあるため、熱処理管理が必須です。

3-2: 異物耐性の観点から

  • SUS316は表面に形成されるクロム酸化皮膜により、異物や微粒子による腐食誘発を防ぐ効果がある。
  • また、モリブデンの添加でピット腐食耐性も向上しているため、多様な腐食環境に適応可能

3-3: 製品適用事例

  • 医療機器の内部構造材
  • 食品・飲料製造装置
  • 化学薬品タンクや配管

など、耐食性と強度のバランスが求められる分野で広く活用されています。


4: SUS316とSUS316Lの価格差

4-1: 市場でのコストの違い

SUS316とSUS316Lの価格差は、主に炭素含有量の違いと製造工程の違いによって生じます。

  • SUS316Lは低炭素仕様であるため、精密な成分管理が必要で、製造コストがやや高くなる傾向があります。
  • しかし、両者の価格差は材料相場の変動や仕入れロットによって変動し、一般的には数パーセントの差にとどまります。

4-2: コスト対効果の分析

  • SUS316Lは溶接後の腐食リスク低減により、メンテナンスコストや交換頻度の低減に寄与します。
  • 長期的な耐久性を考慮すれば、初期費用はやや高くとも総合的なコストパフォーマンスは高いと言えます。
  • 一方、耐食環境が限定的な場合は、コストを抑えるためにSUS316を選択するケースもあります。

5: 選び方と用途

5-1: 使用環境による選択基準

  • 腐食リスクが高い環境(特に溶接部)には、SUS316Lの使用が推奨されます。
  • 一般的な耐食性や耐熱性が求められる場合は、SUS316でも十分対応可能です。
  • 海水や塩分を含む環境、化学薬品の接触が多い場合はSUS316Lの方が安全です。

5-2: 金属加工のポイント

  • SUS316Lは溶接後の割れや感応性腐食が少なく、溶接加工が多い製品に適しています
  • SUS316は強度がやや高く、高温加工や熱処理を伴う製造に向いています。
  • 両者とも切削加工性は似ていますが、加工硬化を避けるための適切な切削条件の管理が必要です。

5-3: 産業別の適用事例

  • SUS316L: 医療機器、海洋構造物、化学装置、食品加工設備
  • SUS316: 一般機械部品、配管システム、耐熱部材、化学プラント機器

6: 腐食のメカニズムと影響

6-1: 塩分と環境による影響

  • 塩分(特に塩素イオン)はステンレス鋼の局部的な孔食(ピット腐食)や割れ腐食を促進します。
  • SUS316Lは低炭素であるため、溶接部の感応性腐食が起こりにくいが、過酷な塩分環境では腐食対策が不可欠。
  • 海洋環境や凍結融解サイクルの激しい環境では、表面の傷や汚れが腐食促進のリスクとなります。

6-2: 長期間の耐食性の維持方法

  • 定期的な清掃と点検により、表面の付着物や腐食性物質を除去。
  • 必要に応じて表面処理(パッシベーション処理や電解研磨)を行い、耐食膜の再生を促進。
  • 適切な設計で水分や汚れの溜まりにくい形状を採用し、腐食リスクを低減。
  • 使用環境に合わせた耐食性向上のための防食コーティングも検討。

7: SUS316・SUS316Lにおける技術的考察

7-1: 耐熱性と応力腐食割れ

  • 耐熱性
    SUS316およびSUS316Lは、オーステナイト系ステンレス鋼として高い耐熱性を持ち、約870℃までの使用が可能です。
    長時間の高温曝露でも機械的特性の保持に優れていますが、熱処理条件や使用環境によっては耐熱強度が変動します。
  • 応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking, SCC)
    SUS316は炭素含有量が若干高いため、溶接部での応力腐食割れリスクがSUS316Lより高い傾向があります。
    SUS316Lは低炭素で溶接後の感応性が低減されており、特に塩素イオン環境下におけるSCC抵抗性に優れています。
    応力腐食割れの防止には、適切な熱処理と応力除去処理が有効です。

7-2: 表面処理と保護技術

  • パッシベーション処理
    SUS316/SUS316Lの表面に酸化膜を形成し、耐食性を高めるための化学処理。
    特に海洋環境や化学プラントでの使用時に腐食防止効果が顕著です。
  • 電解研磨
    表面の微細な凹凸を滑らかにし、腐食発生の起点となる部分を減らすことで耐食性を向上。
    SUS316Lでは溶接部の表面仕上げとして重要です。
  • コーティング技術
    フッ素系やエポキシ系塗装、耐食性コーティングにより、さらなる防食性能を付与可能。
    ただし、コーティングの剥離や劣化には定期的なメンテナンスが必要。

8: SUS316とSUS316Lの結論とまとめ

8-1: 長期的な視点での選定理由

  • SUS316Lは溶接後の腐食リスクが低く、海水環境や化学薬品曝露など過酷な環境での長期耐用性が求められる用途に最適。
  • SUS316は強度が若干高く、加工や熱処理が必要な用途に適し、コストパフォーマンスに優れる場合も多い。
  • 長期的なメンテナンスコストや安全性を考慮すると、初期コストが高くともSUS316Lを選択するメリットが大きい。

8-2: 両者の長所と短所の総括

特性SUS316SUS316L
炭素含有量約0.08%低炭素(約0.03%以下)
機械的強度高め若干低め
耐食性一般的に高い溶接後の耐食性に優れる
応力腐食割れ抵抗性溶接部に割れリスクあり割れリスクが低い
加工性熱処理や加工がやや容易溶接加工に向く
価格若干安価やや高価
  • 総括
    使用環境や加工条件を踏まえた上で、どちらの特性を重視するかにより適材選定が変わる。
    特に溶接構造物や海洋・化学環境ではSUS316Lの採用が推奨される。
    一方で、強度や加工性を重視する一般用途ではSUS316が経済的かつ有効な選択肢となる。

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