SS400の降伏点と引張強さの基礎知識

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目次

1: SS400の概要と特性

1-1: SS400とは何か?

SS400とは、日本産業規格(JIS)における一般構造用圧延鋼材に分類される鋼材です。JIS G 3101に規定され、広く建築・土木・機械分野で使用されています。「SS」は“Steel Structure”の略で、「400」は最低引張強さ(N/mm²)を示す数値です。

安価・加工性・溶接性・入手性に優れるため、構造材料としての定番となっています。


1-2: SS400の機械的性質

SS400は、炭素含有量が比較的低く、熱処理なしで使用可能な汎用鋼です。標準的な機械的性質は以下の通りです(板厚や形状により若干の差あり):

  • 降伏点:≒ 245~275 N/mm²
  • 引張強さ:≒ 400~510 N/mm²
  • 伸び:≒ 17〜25%

→ 機械的性質のバランスが良く、切断・曲げ・穴あけなどの塑性加工に適しています


1-3: SS400の化学成分

SS400は炭素量を抑えた軟鋼(低炭素鋼)に分類され、代表的な化学成分は以下の通りです。

  • C(炭素):0.050〜0.250%
  • Si(ケイ素):0.05〜0.35%
  • Mn(マンガン):0.60〜1.60%
  • P(リン):0.035%以下
  • S(硫黄):0.035%以下

炭素が低いため硬化性は弱いが、加工性と溶接性に優れます


1-4: SS400の主要用途

SS400は、以下のような幅広い分野で利用されています。

  • 建築構造材(H形鋼、チャンネル、アングル)
  • 機械構造部品(ベースプレート、架台、ブラケット)
  • 鋼製製缶・溶接構造物
  • 鉄骨フレーム、橋梁、トンネル支柱部材

中〜低強度で十分な構造物には、コストパフォーマンスの高い選定肢です。


2: 降伏点と引張強さの基礎知識

2-1: 降伏点と引張強さの定義

  • 降伏点(Yield Point):材料が弾性から塑性へ移行する応力値。この点を超えると元に戻らず永久変形します。
  • 引張強さ(Tensile Strength):材料が破断するまでに耐えられる最大応力

→ 材料の設計や選定時に安全率を決める基準となります。


2-2: 降伏点の計算方法

降伏点は、引張試験による応力-ひずみ曲線から読み取ります。JIS準拠の試験片を用いて、以下の手順で測定されます。

  1. 材料に徐々に荷重を加える
  2. 伸びが急激に増加する点を確認
  3. そのときの応力値を「降伏点」として採用

→ 材料により明確な降伏点が現れない場合は、0.2%耐力(Proof Stress)を用いることもあります。


2-3: 引張強さの測定方法

引張強さも同様に、引張試験機によって最大荷重を計測し、その荷重を試験片の断面積で割って算出します。

[
\text{引張強さ} = \frac{\text{最大荷重 (N)}}{\text{断面積 (mm²)}}
]

→ 実際の設計では、使用環境や負荷条件を考慮し、安全率をかけた許容応力度(σa)で設計されます。


3: SS400の強度一覧

3-1: SS400の降伏応力の数値

板厚によって若干の差がありますが、目安は以下の通りです。

  • 板厚 ≦ 16mm:245 N/mm²
  • 板厚 16~40mm:235 N/mm²
  • 板厚 > 40mm:225 N/mm²

→ 厚くなるほど内部組織の均一性が低下し、降伏応力はやや低下します。


3-2: SS400の引張強さの数値

引張強さは、板厚に関わらずおおむね以下の範囲に収まります。

  • 引張強さ:400~510 N/mm²

→ 熱処理されない軟鋼材の中では比較的バランスの取れた強度を持っています。


3-3: その他の冶金特性

SS400は炭素鋼であるため、以下のような冶金的性質も備えています。

  • 焼き入れ性:低い
    → 熱処理には向かないが、溶接時の焼割れリスクが低い
  • 被削性:普通
    → 炭素量が少ないため工具摩耗は少ないが、硬度不足に注意
  • 溶接性:良好
    → 一般的なアーク溶接・CO₂溶接が問題なく可能

→ 熱処理を行わずに構造材として利用される現場に適しています。

4: SS400の加工方法

4-1: 切断と成形の技術

SS400は冷間・熱間いずれの加工にも適した汎用鋼材です。主な加工法には以下が含まれます。

  • ガス溶断(アセチレン+酸素):厚板に対応。熱影響部(HAZ)に注意が必要。
  • レーザー切断・プラズマ切断:高精度加工に有効。薄板向け。
  • シャーリング・プレスブレーキ:冷間加工により曲げ・打ち抜きが可能。
  • ロール成形・鍛造:量産部品や建材形鋼に適用されることもある。

炭素量が低いため、切断時のバリやひずみも比較的少なく、塑性加工がしやすいのが特徴です。


4-2: 溶接における注意点

SS400は溶接性に優れる鋼材ですが、以下の点に留意する必要があります。

  • 母材温度管理:溶接割れを防ぐため、予熱(150〜200℃程度)が推奨されることもある。
  • 水素割れ防止:低水素系溶接棒の使用で対策可能。
  • 厚板溶接時:多層溶接・層間温度管理が重要。

施工条件や板厚に応じて、溶接方法(アーク・CO₂・TIGなど)を選定し、後処理としての応力除去焼鈍(SR処理)も検討されることがあります。


4-3: SS400の熱処理方法

SS400は熱処理による硬化には適さない軟鋼ですが、以下の目的で処理されることはあります。

  • 応力除去焼鈍(Stress Relieving)
    → 溶接部や成形品に残留応力がある場合に実施(550〜650℃前後)。
  • 焼鈍(Annealing)
    → 加工硬化を除去し、延性を回復。特に冷間加工後に有効。

焼入れ・焼戻しによる硬度向上はほぼ期待できないため、SS400を使用する設計では機械的強度よりも加工性と溶接性を重視した方が合理的です。


5: SS400のメリット・デメリット

5-1: SS400のメリット

SS400は汎用性に優れ、コストパフォーマンスが高いことから、以下のような利点があります。

  • 材料価格が安価(他の構造用鋼材と比較して)
  • 加工性が良い(曲げ・切断・溶接が容易)
  • 国内流通量が豊富(安定供給・短納期対応)
  • 各種形鋼(H形鋼、アングル等)が揃っている
  • JIS規格に基づく信頼性

大量生産や建築現場での利用において、最もコスト効率の良い選択肢となります。


5-2: SS400のデメリット

一方で、以下のような弱点も存在します。

  • 表面硬度・耐摩耗性が低い(摩耗部品には不向き)
  • 耐食性が低い(錆が発生しやすいため塗装・表面処理が必須)
  • 高温・低温環境には不向き(脆性破壊のリスクあり)
  • 熱処理による強化が難しい

高強度部材や耐腐食性が求められる環境では、ステンレスや高張力鋼材の選定が必要になります。


6: SS400の標準規格

6-1: JIS規格とその内容

SS400はJIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)に規定されており、適用される主な製品形状と対応規格は以下の通りです。

  • 厚板・薄板・形鋼・棒鋼
  • 各製品における寸法公差・化学成分・機械的性質が明記されている
  • JIS G 3101以外にも、製品別に補助的な規格(例:JIS G 3192など)で寸法が定められる

→ JISに準拠した材料選定により、設計図面との整合性・信頼性が確保されます


6-2: 他の鋼材との違い

SS400は構造材としては基準となる材料であり、他の鋼種との違いは以下の通りです。

  • S45C(機械構造用炭素鋼)との比較
    → S45Cは熱処理による高硬度化が可能。SS400は非熱処理材。
  • SM490(溶接構造用高張力鋼)との比較
    → SM490は降伏点・引張強さが高く、大型構造物に適している。
  • ステンレス鋼(SUS304など)との比較
    → SUS304は耐食性に優れ屋外使用に適すが、価格が高く加工性も異なる。

→ 用途に応じてコスト・強度・耐食性・加工性をトレードオフで比較し選定する必要があります。

7: SS400の選定基準

7-1: プロジェクトにおける選定ポイント

SS400は建築・機械・土木分野で広く使用される構造用鋼材ですが、用途や設計条件に応じた慎重な選定が重要です。以下のポイントが代表的です。

  • 荷重条件(静的・動的):構造部材として使用する場合、設計荷重に対して充分な降伏強度が確保されているか確認。
  • 加工工程:溶接・切断・曲げなどの工程がある場合、加工性の良さを活かせるかが判断基準となる。
  • コスト重視か性能重視か:機械的強度や耐候性より初期コストを抑えたい場合に最適
  • 流通性と納期:短納期での対応が求められる場合、SS400の国内在庫の豊富さが強みとなる。

→ 設計条件・加工環境・コストバランスの観点から、過不足のない選定を行うことが重要です。


7-2: 素材選定の重要性

素材選定は製品の寿命・安全性・維持管理コストを大きく左右します。SS400を選定する際の判断軸には以下が含まれます。

  • 使用環境(屋内・屋外・湿潤環境)
  • 求められる寿命とメンテナンス頻度
  • 他素材(ステンレス・アルミ・高張力鋼など)との比較
  • 仕上げ処理(防錆塗装・溶融亜鉛メッキなど)の可否

→ 特に耐食性や耐久性が必要な用途では、SS400単体では不十分となることもあるため、素材選定は設計初期段階から検討すべき工程です。


8: SS400の使用に関する注意点

8-1: 環境による性能への影響

SS400は炭素鋼のため、使用環境により腐食・劣化のリスクがあります。以下のような環境では対策が不可欠です。

  • 屋外や海岸地域:塩害・湿気による腐食進行が早いため、塗装やメッキ処理が必須
  • 酸性・アルカリ性環境:化学薬品の影響で腐食や腐蝕割れが発生する可能性あり。
  • 高温・低温下の使用:延性低下や脆性破壊のリスクがあるため、使用温度範囲の確認が必要

→ SS400は一般的な環境には適応性が高いものの、特殊環境下では適切な表面処理・設計対応が求められます


8-2: 長期使用時の変形

SS400は強度よりも加工性・汎用性を重視した鋼材のため、長期使用時に以下のような現象が起こる可能性があります。

  • クリープ変形:常時荷重や熱環境下での長期使用により、わずかな塑性変形が蓄積。
  • 腐食による断面減少:断面が細くなることで、設計上の強度を下回る可能性。
  • 疲労破壊:繰返し荷重を受ける構造物では、微細な亀裂が進行し破断することも。

定期的な保守点検や応力分散設計が必要であり、構造体の長寿命化には適切なメンテナンスが不可欠です。


9: SS400の品質管理

9-1: 製造過程における品質保証

SS400はJIS G 3101に基づいた品質管理体制の下で生産されており、以下の工程で品質保証が行われます。

  • 原材料の化学成分分析:C, Si, Mn, P, S などの成分比率管理。
  • 圧延・熱間処理工程の管理:適正温度・圧延条件の設定により物性を安定化。
  • 寸法・外観検査:厚み・幅・長さの公差、表面キズ・割れの確認。

各製鋼メーカーごとの品質基準にも差があるため、ミルシート(材質証明書)やロット管理も重要です。


9-2: 試験と認証のプロセス

SS400の出荷前には、JIS規格に基づく以下のような試験が実施されます。

  • 引張試験(Tensile Test):引張強さ・降伏点・伸び率を確認。
  • 曲げ試験(Bend Test):靭性や加工時の割れの有無を確認。
  • シャルピー衝撃試験(必要時):特に低温環境での脆性確認。

→ これらの試験結果は、材料のトレーサビリティを確保する上でも極めて重要であり、建築確認申請や製品保証にも活用されます。



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