「SUS304とSUS316の違いとは?プロが解説するステンレス材質の選び方」

ステンレス鋼を選ぶ際、「SUS304」と「SUS316」の違いについてご存知ですか?これらの材質は、それぞれ異なる特性を持っており、適切に選ぶことが重要です。プロが解説するこの記事では、SUS304とSUS316の違いに焦点を当て、どちらを選ぶべきかを具体的にお伝えします。ステンレス材質選びにお悩みの方々にとって、この情報はきっと役立つことでしょう。それでは、さっそく詳細をご紹介します。
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目次

SUS304とSUS316の基本的理解

ステンレス鋼は、その耐食性と強度のバランスの良さから、さまざまな産業で使用されています。特にSUS304とSUS316は、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼として広く用いられています。本章では、ステンレス鋼の基本的な特徴と、SUS304およびSUS316の定義について解説します。

ステンレス鋼とは何か

ステンレス鋼(Stainless Steel)は、鉄(Fe)を主成分とし、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金鋼のことを指します。クロムは鉄と結合することで酸化被膜(不動態皮膜)を形成し、これが耐食性を高める主な要因となります。さらに、用途に応じてニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、窒素(N)などが添加され、さまざまな特性を持つステンレス鋼が開発されています。 ステンレス鋼は、主に以下の5種類に分類されます。
  • オーステナイト系(SUS304、SUS316など) ニッケルを含み、耐食性と加工性に優れる。磁性を持たない。
  • フェライト系(SUS430など) クロム主体の合金で、耐食性はあるが溶接性が低い。磁性を持つ。
  • マルテンサイト系(SUS410など) 硬度と耐摩耗性に優れるが、耐食性は低め。磁性を持つ。
  • 二相系(デュプレックス)(SUS329J1など) フェライト相とオーステナイト相を併せ持ち、高強度と耐食性を両立。
  • 析出硬化系(SUS630など) 熱処理によって強度を向上させるタイプ。航空機部品などに使用。
この中で、SUS304とSUS316はオーステナイト系に分類され、耐食性と加工性のバランスが優れていることから、食品加工設備や化学プラントなど幅広い分野で使用されています。

SUS304とSUS316の定義

SUS304とSUS316は、日本工業規格(JIS)に基づくステンレス鋼の分類であり、それぞれ以下のように定義されています。

SUS304

SUS304は、クロム(Cr)18%、ニッケル(Ni)8%を主成分とするオーステナイト系ステンレス鋼であり、「18-8ステンレス」とも呼ばれます。 耐食性が高く、加工性や溶接性にも優れているため、以下のような幅広い用途に適しています。
  • 用途例:厨房機器、食品加工機械、建築材料、医療機器、自動車部品

SUS316

SUS316は、SUS304に比べて耐食性を向上させたステンレス鋼で、クロム(Cr)16%、ニッケル(Ni)10%、さらにモリブデン(Mo)を2%程度含みます。 特に塩化物環境(海水、化学プラントなど)での耐食性が強化されており、より過酷な環境下での使用に適しています。
  • 用途例:海洋設備、化学プラント、医療機器、製薬設備、食品加工設備
SUS316はSUS304よりもコストが高くなりますが、その分耐食性に優れているため、環境に応じて適切な材質を選定することが重要です。

SUS304とSUS316の違い

SUS304とSUS316は、どちらもオーステナイト系ステンレス鋼に分類され、耐食性や加工性に優れています。しかし、化学成分や物理的性質、耐食性において違いがあり、用途によって適切な選択をすることが重要です。それぞれの特性を比較しながら解説します。

化学成分の比較

SUS304とSUS316の最も大きな違いは、SUS316にモリブデン(Mo)が含まれていることです。この成分が耐食性を向上させ、特に塩化物環境下での耐久性を高めています。 SUS304の主な成分は、炭素(C)が0.08%以下、クロム(Cr)が18.0~20.0%、ニッケル(Ni)が8.0~10.5%です。一方、SUS316は炭素(C)が同じく0.08%以下ですが、クロム(Cr)が16.0~18.0%とやや少なく、ニッケル(Ni)が10.0~14.0%とやや多めに含まれています。そして、SUS316の最大の特徴であるモリブデン(Mo)が2.0~3.0%含まれ、これが耐食性の向上に大きく寄与しています。

物理的性質の対比

SUS304とSUS316の物理的性質には大きな違いはありませんが、SUS316の方がわずかに密度が高く、溶融温度が低い傾向があります。 比重に関しては、SUS304が7.93、SUS316が7.98とわずかにSUS316の方が重くなっています。また、溶融温度はSUS304が1,400~1,450°C、SUS316が1,370~1,400°Cと、SUS316の方が若干低い温度で溶ける特性があります。熱伝導率や電気抵抗についてもSUS304とSUS316でほとんど差はなく、どちらも同程度の性能を持っています。

耐食性の違い

SUS316の最大の特長は、モリブデンの添加による耐食性の向上です。特に塩分を含む環境での耐久性が高く、海水やプールなどの環境で使用されることが多いです。 SUS304は一般的な環境では優れた耐食性を持ちますが、塩分や酸性環境にさらされると腐食しやすくなります。例えば、屋内での使用や食品加工機械、キッチン用品などに適していますが、屋外や塩害の影響を受ける場所では腐食のリスクがあります。 一方、SUS316は塩害や化学薬品への耐性が強く、海水環境や薬品を扱う工場、医療機器などで使用されます。特に、塩化物による孔食や隙間腐食に対して強く、高い耐久性を発揮します。そのため、医療・食品・製薬産業など、高い衛生性と耐腐食性が求められる場面で多用されています。

ステンレス材料の特性と性能

ステンレス鋼は、鉄にクロムやニッケルを添加した合金であり、耐食性や強度に優れています。特に、SUS304とSUS316は代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であり、それぞれ異なる特性を持ちます。ここでは、それぞれの特性と性能について詳しく解説します。

SUS304の特性

SUS304は、最も一般的に使用されるステンレス鋼であり、優れた耐食性と加工性を持ちます。特に、食品加工設備や建築材料、家庭用品など幅広い用途で使用されています。
  • 耐食性:クロム(Cr)を18~20%、ニッケル(Ni)を8~10.5%含み、酸化や錆に強い特性を持つ。ただし、塩化物環境では腐食のリスクがある。
  • 機械的特性:引張強さは約520MPa以上、耐力は約205MPa以上と強度も十分に確保されている。
  • 加工性:溶接性や成形性に優れ、曲げ加工やプレス加工にも適している。
  • 耐熱性:約870~925°Cの温度範囲で酸化に耐えることができ、高温環境下でも使用可能。

SUS316の特性

SUS316は、SUS304に比べてさらに優れた耐食性を持ち、特に塩分や化学薬品に対する耐性が強化されています。そのため、医療機器や化学プラント、海水環境などの過酷な条件で使用されます。
  • 耐食性:モリブデン(Mo)を2~3%含むことで、塩化物環境や化学薬品に対する耐食性が向上。特に海水や塩害のある場所での使用に適している。
  • 機械的特性:引張強さは約530MPa以上、耐力は約205MPa以上と、SUS304と同等の強度を持つ。
  • 加工性:SUS304と同様に優れた溶接性と成形性を持つが、若干硬度が高いため、加工時にはやや高い切削抵抗が発生することがある。
  • 耐熱性:約870~925°Cの温度範囲で酸化に耐えることができ、高温環境にも適用可能。
SUS304とSUS316は、どちらも優れた特性を持つステンレス鋼ですが、使用環境に応じて適切な材料を選定することが重要です。特に、塩分や薬品にさらされる環境ではSUS316が適しており、コストや加工性を考慮する場合はSUS304が選ばれることが多くなります。

ステンレス材料の選び方

ステンレス鋼は、その優れた耐食性や強度から多くの分野で使用されています。しかし、適切なステンレス材料を選定するためには、使用環境やメンテナンスのしやすさを考慮することが重要です。ここでは、ステンレス材料の選び方について詳しく解説します。

使用環境の考慮

ステンレス鋼の選定において、最も重要なのは使用環境です。環境条件に適した材料を選ばなければ、腐食や劣化のリスクが高まり、性能が十分に発揮されないことがあります。
  • 屋内使用 屋内での使用であれば、一般的なSUS304で十分な耐食性を発揮します。特に、キッチン用品や家庭用の家具・設備などではSUS304がよく使用されます。
  • 屋外使用 雨や湿気にさらされる環境では、耐候性が求められます。SUS304も使用可能ですが、より高い耐食性を求める場合はSUS316が適しています。
  • 海岸・塩害地域 塩分を含んだ環境では、一般的なステンレス鋼は腐食のリスクが高まります。モリブデン(Mo)を含むSUS316を選択することで、耐食性が向上し、長期間の使用が可能になります。
  • 化学薬品・高温環境 化学工業や高温環境では、SUS316が適しています。酸やアルカリに強い特性を持ち、過酷な条件下でも長期間の使用が可能です。

耐久性とメンテナンス

ステンレス鋼は基本的に耐久性が高く、メンテナンスの負担が少ない素材ですが、使用状況によっては適切な管理が必要になります。
  • 耐久性の比較 SUS304は多くの一般用途で十分な耐久性を発揮しますが、塩害や薬品環境ではSUS316の方が長寿命になります。また、傷がつきにくい表面仕上げ(ヘアラインや鏡面仕上げ)を選択することで、劣化を防ぐこともできます。
  • メンテナンスのしやすさ ステンレス鋼は基本的に錆びにくいですが、汚れや水分が付着したまま放置すると腐食が進むことがあります。定期的な清掃やメンテナンスが重要であり、特に食品や医療分野では衛生管理のための適切な手入れが必要です。
  • コストと性能のバランス SUS316はSUS304に比べて高価ですが、その分耐食性が向上しています。コストを抑えつつ適切な性能を確保したい場合は、使用環境を考慮しながら最適なグレードを選ぶことが重要です。
ステンレス材料を選ぶ際には、使用環境や耐久性、メンテナンスのしやすさを総合的に判断し、適切なグレードを選定することが長期的なコスト削減や性能向上につながります。

ステンレス鋼の種類と特徴

ステンレス鋼は、その優れた耐食性や強度から、さまざまな産業や用途で利用されています。用途に応じて適切なステンレス鋼を選定するためには、種類や特徴を理解することが重要です。ここでは、ステンレス鋼の分類と各種ステンレス鋼の特徴について解説します。

ステンレス鋼の分類と規格

ステンレス鋼は、主に含有する元素や組織の違いにより、以下のように分類されます。
  • オーステナイト系ステンレス鋼(Austenitic Stainless Steel)
    • 代表例:SUS304、SUS316
    • 主成分:クロム(Cr)、ニッケル(Ni)
    • 特徴:高い耐食性と優れた加工性を持ち、磁性を持たない
    • 用途:食品加工機器、医療機器、建築材料など
  • フェライト系ステンレス鋼(Ferritic Stainless Steel)
    • 代表例:SUS430
    • 主成分:クロム(Cr)のみ
    • 特徴:耐食性はオーステナイト系に劣るが、コストが安く磁性を持つ
    • 用途:厨房機器、家庭用電化製品、自動車部品など
  • マルテンサイト系ステンレス鋼(Martensitic Stainless Steel)
    • 代表例:SUS410、SUS420
    • 主成分:クロム(Cr)、一部に炭素(C)
    • 特徴:硬度が高く、耐摩耗性に優れるが、耐食性は低い
    • 用途:刃物、工具、バルブ部品など
  • 二相系ステンレス鋼(Duplex Stainless Steel)
    • 代表例:SUS329J1
    • 主成分:クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)
    • 特徴:オーステナイト系とフェライト系の特性を併せ持ち、強度と耐食性に優れる
    • 用途:化学プラント、海洋構造物、石油精製設備など
  • 析出硬化系ステンレス鋼(Precipitation Hardening Stainless Steel)
    • 代表例:SUS630(17-4PH)
    • 主成分:クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)
    • 特徴:高強度で、熱処理による硬化が可能
    • 用途:航空機部品、精密機械、シャフトなど

各種ステンレス鋼の特徴

ステンレス鋼には用途に応じた特徴があり、使用環境や求める性能に応じて適切な材料を選ぶ必要があります。
  • SUS304(オーステナイト系)
    • 一般的な用途に広く使用される
    • 耐食性と加工性に優れるが、塩害には弱い
  • SUS316(オーステナイト系)
    • モリブデン(Mo)を含み、SUS304より耐食性が向上
    • 海水や化学薬品に強い
  • SUS430(フェライト系)
    • コストが低く、磁性を持つ
    • 耐食性はSUS304に劣るが、熱膨張が少ない
  • SUS410(マルテンサイト系)
    • 硬度が高く、耐摩耗性に優れる
    • 耐食性は低いため、適切な表面処理が必要
  • SUS329J1(二相系)
    • 高強度かつ優れた耐食性を持つ
    • 低温環境や高温高圧環境に適している
ステンレス鋼は、それぞれの特性を理解し、使用環境に適した種類を選択することで、より効果的に活用することができます。

まとめ

SUS304とSUS316は両方ともステンレス鋼で、主に材料として使用されます。SUS316はSUS304よりも耐食性が高く、塩分や酸に対してより強力な耐久性を持っています。一方で、SUS304は加工しやすく、一般的な環境での使用に適しています。材料を選ぶ際には、使用環境や要件に合わせて適切なものを選択することが重要です。
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