SUS444とSUS304の違いを徹底比較:成分・特性・用途から選定の秘訣まで
「どちらのステンレスを使えばよいのか?」という疑問を抱えていませんか?特に、SUS444とSUS304という2つの鋼種を目の前にしたとき、その違いを正しく理解し選定できることが、設計ミスや生産トラブルを避ける鍵となります。本記事では、SUS444とSUS304の化学成分から機械的特性、そして具体的な用途と加工上のポイントまで、実務で役立つ視点で深掘りしていきます。
なぜ「SUS444 vs SUS304」を知る必要があるのか?
ステンレス鋼は多様な用途に用いられますが、鋼種を誤ると「耐食性が足りない」「コストが高すぎる」「加工が難しい」など、設計段階での失敗につながります。SUS444とSUS304はどちらも耐食性がある鋼種ですが、使用環境や費用・加工性を考えると明確な選び分けが必要です。たとえば塩分や硫化ガスが多く含まれる環境ではSUS444が優位となる場面があります。一方で一般的な設備用途ではSUS304がコスト・加工性の面でバランスが取れた選択肢となります。
本記事では「違い」を軸に、あなたがどのような環境や用途でどちらを選べばよいかを紐解いていきます。
化学成分と構造の違い
まず、それぞれの鋼種がどのような化学成分構成を持ち、どのような構造的特徴をもつのかを理解しましょう。
| 鋼種 | 主な成分特徴 | 構造分類 |
|---|---|---|
| SUS304 | Cr約18%、Ni約8〜10%、Moなし | オーステナイト系(非磁性) |
| SUS444 | Cr約17〜20%、Mo約1〜2%、Niほぼなし | フェライト系(磁性あり) |
SUS304はニッケルを含むオーステナイト系のため、非磁性で成形性・加工性に優れています。対してSUS444はフェライト系であり、磁性を有し、ニッケルをほとんど含まないため価格変動に強いという特長があります。また、モリブデンの添加により耐孔食性が向上しています。成分の違いだけでも、用途や設計条件において意識すべきポイントが変わってきます。
機械的・物理的特性の比較
続いて、両鋼種の機械的・物理的特性を比較し、設計において「どこが違うのか」を見ていきます。
| 特性 | SUS304 | SUS444 |
|---|---|---|
| 耐孔食性 | 中程度 | 高(Mo添加) |
| 耐熱環境 | 約300〜500℃域 | 約400〜600℃域を想定可 |
| 磁性 | なし | あり |
| 加工性 | 非常に良好 | やや難しい |
| コスト傾向 | 中〜高 | 中(ニッケル含まず) |
この比較表から、設計者が考慮すべきポイントが浮かび上がります。例えば「海水環境」「塩素含有雰囲気」「高温蒸気」などが関係する場合にはSUS444の方が適している可能性があります。逆に「成形性」「加工速度」「コスト最優先」の場合にはSUS304が有効な選択となり得ます。
寿命設計の観点から見た違い
高耐食性を必要とする環境では、50 ℃以上の塩水噴霧試験、塩化物応力腐食割れ(SCC)試験などが実施されます。SUS444はMo添加により、このような試験においてSUS304を上回る耐性を示したという報告があります。実際に、給湯器内の塩水循環環境でSUS444が採用された事例では、10年以上の無事故運転を実現しています。こうした実務事例が、鋼種選定時の信頼性を高めています。
代表用途の違い:何に使うべきか?
それでは、両鋼種が実際に使用されている分野を見て、用途による使い分けのヒントとしましょう。
| 用途分野 | SUS304採用例 | SUS444採用例 |
|---|---|---|
| キッチン・家庭設備 | シンク・調理台・家電外装 | 高塩分地域の温水タンク、水回り設備 |
| 自動車部品 | 排気触媒ケース・構造部品 | 沿岸車両のマフラー・排気系(塩害対策) |
| 化学・プラント設備 | 一般的な耐食配管 | 塩化物含有環境・熱交換器・給湯器 |
用途を見ると、「どこでどちらを選ぶか」のパターンが見えてきます。たとえば、高塩分環境・高耐食性が求められる設備ではSUS444が優位です。逆に、一般的な装置・部材ではコスト・加工性・実績の観点からSUS304が選ばれるケースが多いです。
加工・溶接・供給性における違い
設計・製造の現場では、「加工できるか」「安定供給されるか」「コストに見合うか」という観点も重要です。SUS304はその点で長年の実績と加工性を持っており、溶接や成形が得意です。対してSUS444はやや特殊な成分設計のため、加工時に切削工具寿命や溶接条件の管理が求められます。
具体的には、
- SUS444では切削工具の摩耗がSUS304より早いという報告があります。
- 溶接時には入熱量をコントロールし、後熱処理を検討する必要があります。
- ニッケルを含まないため価格変動が少なく、長期的なコスト安定性が期待できます。
加工性・溶接性の詳細な比較や実務対応については、ステンレス鋼の加工比較に関して解説で詳しく解説しています。
選定時のチェックリスト:どちらを選ぶか?
最後に、設計者が鋼種選定時に押さえておくべきポイントをチェックリスト形式にまとめます。
- 使用環境(塩分・温度・ガス雰囲気)を整理する。
- 必要な耐孔食性・耐硫化性が高いかどうか判断する。
- 加工・溶接条件が標準なのか特殊なのか評価する。
- 予算・供給・長期維持性の観点を考慮する。
- 実績・メンテナンス性・将来改修性も視野に入れる。
よくある質問
SUS444はフェライト系ステンレス鋼で、モリブデンを含むため耐孔食性に優れ、塩分環境での使用に適しています。一方、SUS304はオーステナイト系で加工性が良く、汎用設備に広く使われます。
SUS444は塩化物や硫化ガスを含む腐食環境、例えば海沿いの設備や給湯器、熱交換器などで使用するのに適しています。高耐食性とコスト安定性が求められる場合に最適です。
SUS304は加工性・溶接性・入手性に優れ、コストも比較的安定しているのが利点です。ただし、高塩分環境では耐孔食性が劣るため注意が必要です。
まとめ:SUS444とSUS304、どちらを選ぶべきか?
本稿で見てきたように、SUS444とSUS304の違いは「モリブデン添加・耐孔食性・加工・コスト」など複数の軸で整理できます</strong。高耐食・塩水環境・長寿命を求める用途ではSUS444が優れた選択肢です。一方で、加工容易性・コスト・一般設備用途を重視するならSUS304が適しています。 どちらを選ぶか迷ったときには、使用環境・加工条件・コスト構造を整理し、上記の比較表・チェックリストをもとに判断してください。





