SUS304と403のステンレス鋼は、工業製品や家庭用品など様々な分野でよく使用されています。しかし、一般の方々にとってはその違いや選び方がよくわからないことも多いのではないでしょうか?本記事では、SUS304と403のステンレス鋼の違いに焦点を当て、それぞれの特性や適した用途について詳しく解説します。これにより、製品を選ぶ際に役立つ知識を身につけることができるでしょう。では、さっそくその違いについて見ていきましょう。
目次
SUS304とSUS403のステンレス鋼の基本
 
SUS304とSUS403は、どちらも広く使用されているステンレス鋼ですが、それぞれの特性や用途には違いがあります。以下では、SUS304とSUS403の概要、ステンレス鋼の分類、基本的な特性について詳しく説明します。
 
SUS304とは
 
SUS304は、オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、最も広く使用されているステンレス鋼です。主に鉄にクロム(18%)とニッケル(8%)を添加した合金で、非常に高い耐食性と優れた加工性を持ちます。このため、家庭用品、化学機器、食品業界などで多く使用されています。
 
特徴
 
 	- 耐食性:高い耐食性を持ち、さまざまな化学環境でも長期間使用できます。
- 加工性:冷間加工や溶接が容易であり、さまざまな形状に加工できます。
- 耐熱性:中程度の温度範囲での使用に適しており、温度が高すぎる環境には不向きです。
SUS403とは
 
SUS403は、フェライト系ステンレス鋼であり、クロム(12-14%)を主成分としており、ニッケルをほとんど含まないタイプです。SUS304と比較すると、耐食性は劣るものの、機械的強度が高い特徴があります。そのため、特に高強度を要求される用途で使用されます。
 
特徴
 
 	- 耐食性:SUS304に比べて耐食性はやや劣りますが、乾燥した環境や軽度の腐食環境では十分に使用可能です。
- 機械的強度:フェライト系ステンレス鋼として、比較的高い機械的強度を持ちます。
- 加工性:加工性はSUS304に比べて少し劣りますが、冷間加工や熱処理による強化が可能です。
ステンレス鋼の分類と基本的な特性
 
ステンレス鋼は主に以下の4つの分類に分けられます。
 
| 種類 | 特徴 | 用途 | 
| オーステナイト系 | クロムとニッケルを主成分とし、耐食性に優れる。加工性が良好。 | 食品業界、化学機器、家庭用品、医療機器など | 
| フェライト系 | クロムを主成分とし、機械的強度が高いが、耐食性はやや劣る。 | 自動車部品、建材、装飾品など | 
| マルテンサイト系 | 高い強度と硬度を持ち、耐摩耗性に優れる。 | 刃物、金型、工具など | 
| 析出硬化系 | 特殊な熱処理を施して強度を高めたステンレス鋼。 | 航空機、化学機器、高強度部品など | 
 
SUS304とSUS403の違い
 
SUS304とSUS403は、ステンレス鋼でありながら、化学成分、物理的特性、耐食性、加工性において異なる特徴を持っています。以下に、これらの違いをリストとテーブルを交えて解説します。
 
化学成分の比較
 
 	- SUS304:
 	- クロム(Cr):18%
- ニッケル(Ni):8%
- 炭素(C):最大0.08%
- 鉄(Fe):残り(約74%)
- モリブデン(Mo):0%
 
- SUS403:
 	- クロム(Cr):12-14%
- ニッケル(Ni):0-1%
- 炭素(C):最大0.15%
- 鉄(Fe):残り(約84-86%)
- モリブデン(Mo):0%
 
| 成分 | SUS304 | SUS403 | 
| クロム(Cr) | 18% | 12-14% | 
| ニッケル(Ni) | 8% | 0-1% | 
| 炭素(C) | 最大0.08% | 最大0.15% | 
| 鉄(Fe) | 残り(約74%) | 残り(約84-86%) | 
| モリブデン(Mo) | 0% | 0% | 
 
 
物理的特性の対比
 
 	- SUS304: 高い耐食性、優れた加工性を誇り、一般的な用途に広く使用されますが、耐久性においてはSUS403には及ばないこともあります。
- SUS403: 鉄分が多いため、SUS304よりも若干強度が高く、耐熱性にも優れていますが、耐食性は劣ります。
| 特性 | SUS304 | SUS403 | 
| 密度 | 7.93 g/cm³ | 7.75 g/cm³ | 
| 熱伝導率 | 16.2 W/m·K | 25.4 W/m·K | 
| 比熱容量 | 500 J/kg·K | 470 J/kg·K | 
| 引張強度 | 約520 MPa | 約620 MPa | 
| 伸び(破断時) | 約40% | 約25% | 
 
 
耐食性の違い
 
 	- SUS304は、酸やアルカリ、塩水に非常に強い耐食性を示します。特に化学工業や海洋環境に適しています。
- SUS403は、軽度の腐食環境には耐えますが、強い酸や塩水に対しては弱いため、耐食性を必要とする環境では不向きです。
| 特性 | SUS304 | SUS403 | 
| 耐食性 | 高い | 中程度 | 
| 腐食環境 | 酸、アルカリ、塩水に強い | 軽度の腐食環境には耐えられるが、強い酸や塩水には弱い | 
 
 
加工性の差異
 
 	- SUS304は、良好な加工性を持ち、溶接や冷間加工も得意です。精密な加工が求められる部品や製品に適しています。
- SUS403は加工しにくいとされ、特に溶接性がやや劣ります。高強度を活かした用途に限られます。
| 特性 | SUS304 | SUS403 | 
| 加工性 | 良好 | 普通 | 
| 溶接性 | 優れている | 溶接性はやや劣る | 
| 冷間加工 | 良好 | 加工しにくい | 
 
ステンレス鋼の種類と特性
 
ステンレス鋼はその組織により大きく4つの分類に分けることができます。以下は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、その他のステンレス鋼の特性をまとめた内容です。
 
オーステナイト系ステンレス鋼
 
オーステナイト系ステンレス鋼は、最も広く使用されるタイプで、非常に良好な耐食性、加工性、靭性を持ちます。主に「18-8ステンレス鋼」などがこのカテゴリに分類されます。
 
| 特性 | 説明 | 
| 耐食性 | 非常に高い | 
| 磁性 | 非磁性 | 
| 加工性 | 良好 | 
| 耐熱性 | 中程度 | 
| 主な鋼種 | SUS304, SUS316, SUS310S, SUS303 | 
| 主な用途 | 食品業界、医療機器、化学工業など | 
 
 
フェライト系ステンレス鋼
 
フェライト系ステンレス鋼は、主に鉄とクロムを基にした合金で、一般的にオーステナイト系に比べて硬度が高く、耐食性は若干低めです。磁性があり、加工性が優れています。
 
| 特性 | 説明 | 
| 耐食性 | 中程度 | 
| 磁性 | 磁性あり | 
| 加工性 | 優れている | 
| 耐熱性 | 高い | 
| 主な鋼種 | SUS430, SUS446, SUS439 | 
| 主な用途 | 自動車部品、家庭用調理器具、建材 | 
 
 
マルテンサイト系ステンレス鋼
 
マルテンサイト系ステンレス鋼は、硬度と強度に優れており、主に工具や刃物として使用されます。耐食性はやや劣るものの、非常に強い鋼です。
 
| 特性 | 説明 | 
| 耐食性 | 普通(他の系統に比べて劣る) | 
| 磁性 | 磁性あり | 
| 加工性 | 普通 | 
| 耐熱性 | 中程度 | 
| 主な鋼種 | SUS410, SUS420, SUS440C | 
| 主な用途 | 刃物、精密機器、工具類 | 
 
 
その他のステンレス鋼
 
その他のステンレス鋼は、上記の3系統に分類されない鋼種を指し、特別な条件下で使用されるものが多いです。例えば、析出硬化型や高炭素ステンレス鋼などが含まれます。
 
| 特性 | 説明 | 
| 耐食性 | 特定の条件に応じて異なる | 
| 磁性 | 状況により異なる | 
| 加工性 | 特殊な処理が必要な場合がある | 
| 耐熱性 | 高温耐性に優れるタイプもある | 
| 主な鋼種 | SUS15-5PH, SUS630, SUS304L | 
| 主な用途 | 航空機部品、高温環境下での使用 | 
 
ステンレス鋼SUS304とSUS403の選び方
 
ステンレス鋼SUS304とSUS403は、それぞれ特性が異なり、使用目的や環境条件によって最適な選択が変わります。以下に、用途に応じた選択方法、環境条件との関係、およびコストパフォーマンスの観点から、SUS304とSUS403の選び方を示します。
 
用途に応じた選択
 
SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼で、優れた耐食性と加工性を持ち、特に高温環境や酸性環境に強いです。一方、SUS403はマルテンサイト系で、硬度と強度に優れ、機械的な耐久性が必要な用途に適しています。
 
 	- SUS304の適用例
 	- 食品業界(食品加工機械、調理器具)
- 化学工業(薬品設備、貯蔵タンク)
- 建材(外装材、内装材)
 
- SUS403の適用例
 	- 自動車部品(エンジン部品、排気管)
- 刃物や工具
- 高強度が要求される機械部品
 
| 特性 | SUS304 | SUS403 | 
| 主な用途 | 食品、化学工業、建材 | 自動車部品、刃物、工具 | 
| 主要特性 | 耐食性、加工性、靭性 | 高強度、耐摩耗性、硬度 | 
| 特殊環境対応 | 高温、酸性環境に強い | 耐熱性、耐衝撃性に優れる | 
 
 
環境条件との関係
 
SUS304は耐食性が高く、湿気や酸性環境などでの腐食を抑制します。これに対して、SUS403は耐食性はSUS304ほど高くはありませんが、特に高強度が必要な機械的要求がある環境では優れた性能を発揮します。
 
 	- SUS304を選ぶべき環境条件
 	- 酸性または塩分を含む環境
- 高温環境(最大870℃程度まで対応可能)
- 食品や医療分野での使用
 
- SUS403を選ぶべき環境条件
 	- 高強度や耐摩耗性が必要な環境
- 高温環境(最大650℃程度まで対応可能)
- 硬度や強度重視の機械部品
 
| 環境条件 | SUS304 | SUS403 | 
| 耐食性 | 高い | 低い | 
| 温度範囲 | 870℃まで対応可能 | 650℃まで対応可能 | 
| 使用環境 | 酸性、塩分環境、高温環境 | 高強度、耐摩耗性、機械的強度重視 | 
 
 
コストパフォーマンス
 
コスト面では、SUS304は耐食性と加工性が高いため、比較的高価ですが、長期的な耐久性を考慮すれば経済的です。SUS403は高強度であるものの、耐食性は劣るため、使用環境によってはコストパフォーマンスが低くなる可能性があります。したがって、コストを重視しつつ適切な鋼材を選ぶことが重要です。
 
 	- SUS304のコストパフォーマンス
 	- 耐食性や加工性の優れた性能を持つため、長期使用でコストを削減
- 適切な用途において、コスト効率が良い
 
- SUS403のコストパフォーマンス
 	- 高強度が求められる場合、優れたコストパフォーマンスを発揮
- 耐食性を重視する環境では劣るため、コスト効率が低下する可能性あり
 
| コストパフォーマンス | SUS304 | SUS403 | 
| 性能のバランス | 高い耐食性、長期的に経済的 | 高強度、高硬度、機械的要求に優れる | 
| 適用コスト | 比較的高いが、長期使用でコスト削減 | 耐食性が必要な環境ではコスト効果が低い |