SUS430ステンレス加工を行う際、最適な切削条件を知っていますか?新しいプロジェクトに取り組む際、正しい切削条件を知ることは成功の鍵となります。このガイドでは、SUS430ステンレスの加工における最適な切削条件について詳しく解説します。切削条件や最適なツールの選び方、効率的な作業方法について知りたい方におすすめです。さあ、素材加工の世界への一歩を踏み出してみましょう。
SUS430ステンレスとは
SUS430は、鉄とクロム(Cr)を主成分とする「フェライト系ステンレス鋼」に分類される材料で、耐食性や加工性に優れ、コストパフォーマンスが高い特徴を持っています。ニッケルを含まず、磁性を持つため、特定の用途で有用です。
SUS430の特性と用途
- 耐食性
SUS430はクロムを16~18%含み、不動態皮膜を形成して酸化を防ぎますが、SUS304と比べて塩分や酸に対する耐性が劣ります。 - 加工性・成形性
冷間加工やプレス加工に優れ、薄板の加工に適していますが、延性が低く深絞り加工には不向きです。 - 溶接性
溶接は可能ですが、熱による粒界腐食のリスクがあり、低炭素化されたSUS430Lを使用することが推奨される場合があります。 - 磁性
SUS430は磁性を持つため、磁石が吸着する特性があります。これにより磁性部品として使用されることもあります。 - 主な用途
SUS430は厨房機器や電化製品の外装、家庭用品(シンク、流し台など)などで使用され、耐食性とコストパフォーマンスが求められる場面に適しています。
SUS430とSUS304の比較
- 耐食性
SUS304はより高い耐食性を持ち、塩分や酸環境にも耐性がありますが、SUS430は比較的中程度の耐食性です。 - 磁性
SUS430は磁性を持つのに対し、SUS304は非磁性です。 - 価格
SUS430はニッケルを含まないため、SUS304よりも安価です。 - 加工性
SUS430は一般的な成形に向いていますが、SUS304は深絞りなど複雑な加工にも適しています。 - 用途
SUS430は装飾性が求められる用途に適し、SUS304はより厳しい耐食環境に使用されます。
ステンレスのグレードと分類
ステンレス鋼は以下の4つの系統に分類され、各々が異なる特性と用途を持っています。
- オーステナイト系(例: SUS304、SUS316)
- 高い耐食性と非磁性が特徴で、食品機械や医療機器、化学プラントに使用されます。
- フェライト系(例: SUS430、SUS410)
- 磁性を持ち、コストが安価で中程度の耐食性を提供。厨房機器や家庭用品、建築内装で使用されます。
- マルテンサイト系(例: SUS420、SUS440)
- 高硬度と耐摩耗性を持ち、熱処理が可能。刃物や工具、バルブに使用されます。
- 二相系(デュプレックス系: SUS329J1、SUS329J4Lなど)
- オーステナイトとフェライトが混合された構造で、強度と耐食性のバランスが良好。化学装置や造船、海水機器に使用されます。
適切なグレードのステンレス鋼を選ぶことは、使用環境や機械的特性を考慮するために非常に重要です。
ステンレス加工の基礎
ステンレス鋼は、非常に優れた耐食性を持ち、様々な分野で使用されています。しかし、その高い強度や硬度、耐熱性から加工には特別な技術と注意が必要です。以下では、ステンレス加工に関する基本的なプロセスと理解すべき材料特性、そして加工中に直面する一般的な課題について解説します。
ステンレス加工の基本プロセス
ステンレス鋼の加工には、以下の基本的なプロセスがあります。
- 切削加工
ステンレスは硬く、切削抵抗が大きいため、切削工具には高い耐摩耗性が求められます。ドリルやフライス盤などで行われ、加工速度や冷却の管理が重要です。 - 曲げ加工
ステンレス鋼は、強度が高いため、曲げ加工時に破断しやすい傾向があります。適切な曲げ半径と加工条件を選定することが重要です。 - 溶接
ステンレス鋼の溶接は、熱膨張やひずみを最小限に抑えるため、細心の注意を払って行う必要があります。TIG溶接やMIG溶接が一般的に使用されます。 - 研磨加工
ステンレス鋼は表面の美観も重要なため、研磨加工が行われます。表面の粗さを抑えるために、適切な研磨ツールと技術が必要です。 - 打抜き・プレス加工
ステンレスの薄板を使用した打抜きやプレス加工では、金型の設計や適切な圧力の選定が必要です。硬度が高いので、工具や金型の耐久性も考慮する必要があります。
加工における材料の特性理解
ステンレス鋼の加工には、その特性を十分に理解しておくことが成功の鍵です。
- 高い強度と硬度
ステンレス鋼は非常に強靭で硬いため、切削や曲げ加工時に通常の工具では耐久性が低くなる可能性があります。適切な切削工具や加工条件を選定することが求められます。 - 耐食性
ステンレス鋼は耐食性に優れていますが、加工中に生じた切削屑や汚れが原因で表面に錆が発生することがあります。加工後の洗浄が重要です。 - 熱膨張
ステンレスは温度変化に敏感で膨張しやすいため、溶接や熱処理の際には膨張を考慮しておく必要があります。熱歪みやひずみを最小限に抑えるための技術が求められます。 - 磁性と非磁性
ステンレス鋼には、オーステナイト系(非磁性)とフェライト系(磁性)があります。用途によって、適切なグレードを選ぶことが重要です。
ステンレス加工の一般的な課題
ステンレス鋼の加工では、以下のような課題に直面することが多いです。
- 工具の摩耗
ステンレス鋼は硬いため、加工時に工具が早く摩耗することが多いです。高耐久性の工具や適切な切削条件の設定が重要です。 - 熱膨張と歪み
ステンレス鋼は温度変化により膨張しやすく、これにより加工中に歪みが生じることがあります。冷却や温度管理を適切に行うことが求められます。 - 加工速度の調整
ステンレス鋼は切削が難しい材料であり、加工速度が早すぎると表面仕上げが粗くなり、逆に遅すぎると効率が低下します。適切な加工速度を見極めることが求められます。 - 切削不良の発生
切削中に焼き付けや溶接ビードのような不良が発生することがあります。これを防ぐためには、適切な切削油や冷却方法を使用する必要があります。 - 溶接後の変形
ステンレス鋼の溶接後に生じる熱歪みや変形も大きな課題です。溶接順序や温度管理、後処理を適切に行うことでこれを最小限に抑えることができます。
これらの課題に対処するためには、材料特性に合わせた加工技術や適切な設備を使用することが大切です。
切削条件SUS430の理解と設定
SUS430は、フェライト系ステンレス鋼であり、磁性を持ちながらも耐食性に優れています。SUS430の切削加工には、他のステンレス鋼とは異なる特性を考慮する必要があります。以下では、切削条件の基本要素とSUS430の最適切削条件の選定方法、また切削速度と送り速度のバランスについて解説します。
切削条件の基本要素
切削条件を設定する際には、以下の基本要素を考慮することが重要です。
- 切削速度
切削速度は、工具が材料に対して進む速度を表します。高すぎる切削速度では工具が早く摩耗し、低すぎる速度では加工効率が低下します。適切な切削速度を選ぶことが、加工精度と工具寿命に大きく影響します。 - 送り速度
送り速度は、工具の切削面が移動する速さを示します。これにより、1回の加工で切削する量が決まります。送り速度が速すぎると、切削面が荒くなる可能性があり、遅すぎると効率が悪くなります。 - 切削深さ
切削深さは、材料を削る深さであり、この深さにより加工の難易度や仕上がりが変わります。深すぎると工具に過剰な負荷がかかり、浅すぎると加工効率が低下します。 - クーラントの使用
SUS430は切削時に発熱しやすいため、クーラントを適切に使用することで切削温度を下げ、工具の摩耗を防ぐことができます。
SUS430の最適切削条件の選定
SUS430は硬度が比較的高く、切削加工時には高い切削力が必要となります。最適な切削条件を選定するには、以下のポイントに留意します。
- 切削速度
SUS430の切削速度は、一般的に30~70 m/minの範囲が推奨されます。具体的な切削速度は、使用する工具の材質や切削条件によって調整が必要です。硬度が高いため、過剰な切削速度を避け、適切な範囲で設定することが重要です。 - 送り速度
送り速度は、0.1~0.25 mm/rev程度で設定されることが多いです。送り速度が高すぎると、表面仕上がりが粗くなり、低すぎると加工時間が長くなります。適切な送り速度を選ぶことで、加工効率を最大化できます。 - 切削深さ
SUS430の切削深さは、0.2~2 mmの範囲で設定されることが一般的です。深すぎる切削深さは工具の摩耗を早めるため、適切な深さに設定することが求められます。 - 工具の選定
SUS430は硬度が高いため、切削工具には耐摩耗性の高い材質(例:コーティングされた高速鋼や超硬工具)を選定することが重要です。
切削速度と送り速度のバランス
切削速度と送り速度のバランスは、SUS430の加工において非常に重要です。これらの要素が適切に調整されていないと、加工精度や工具寿命に悪影響を与える可能性があります。
- 切削速度の設定
切削速度が速すぎると、工具の摩耗が激しくなるだけでなく、仕上がりが悪くなる可能性があります。逆に、切削速度が遅すぎると効率が悪化し、加工時間が増大します。適切な範囲での切削速度を選び、効率的かつ高精度な加工を行います。 - 送り速度の設定
送り速度が速すぎると、表面が荒くなり、切削不良が発生しやすくなります。また、遅すぎる送り速度では、時間当たりの加工量が少なくなり、加工効率が低下します。切削速度と送り速度のバランスを取ることで、加工精度と効率を最適化できます。 - 切削条件の最適化
切削条件は常に実際の加工状況に合わせて調整する必要があります。材料の状態や工具の摩耗具合を確認し、適宜設定を見直すことが重要です。定期的なメンテナンスや切削条件の見直しが、長期的な加工効率の向上につながります。
以上のポイントを踏まえて、SUS430の切削条件を最適化することで、加工精度の向上と工具寿命の延長を実現することができます。
ステンレス加工での切削の注意点
ステンレス鋼は、非常に硬度が高く、加工が難しい材料の一つです。特に切削加工を行う際には、温度管理やツーリング、冷却剤の選択が重要であり、またバリや変形を防止するための対策が必要です。以下では、ステンレス加工での切削時における注意点について解説します。
切削時の温度管理
ステンレス鋼は切削時に非常に高温になりやすいため、温度管理が重要です。温度が高くなると、材料が膨張しやすく、また工具の摩耗も早くなります。適切な温度管理を行うことで、加工精度を保ちながら工具の寿命を延ばすことができます。
- 高温の問題
ステンレス鋼は熱伝導性が低いため、切削時に発生する熱が材料や工具に蓄積されやすく、これが加工不良を引き起こす原因となります。高温になると、材料が焼き入れを受けたように硬度が上昇し、切削が非常に困難になることがあります。 - 冷却の重要性
クーラントを使用することで、切削面の温度を低く保ち、工具の摩耗を抑えることができます。冷却剤の選択も重要であり、ステンレス鋼に適した冷却剤を使用することで、効果的な冷却が実現できます。
ツーリングと冷却剤の選択
切削中の温度管理を最適化するためには、ツーリングや冷却剤の選択も重要な要素となります。
- ツーリングの選定
ステンレス鋼を切削する際には、耐熱性や耐摩耗性に優れたツールを選択する必要があります。例えば、コーティングされた超硬工具や、特殊なチッピング防止機能を持った工具が適しています。これにより、高温や高圧下での切削を安定して行うことができます。 - 冷却剤の選択
ステンレス鋼の加工には、油性または水溶性冷却剤を使用することが一般的です。水溶性冷却剤は冷却性に優れ、加工中の熱を効率よく拡散することができます。一方、油性冷却剤は摩擦を減らす効果があり、特に高負荷の切削加工には適しています。
切削時のバリや変形の防止
ステンレス鋼を切削する際には、バリや変形の問題に直面することが多くあります。これらを防ぐためには、加工の設定を適切に行うことが重要です。
- バリの発生原因
バリは、切削加工後に部品のエッジに残る小さな突起です。特にステンレス鋼では、切断面が硬くなりやすいため、バリが発生しやすくなります。バリが残ると、後処理が必要になるほか、部品の品質にも影響を与えます。 - バリの防止方法
バリの発生を抑えるためには、適切な切削条件を設定することが必要です。例えば、切削速度や送り速度を調整して、スムーズな切削を行うことが効果的です。また、切削後にバリ取り作業を行うことも有効です。 - 変形の防止
ステンレス鋼は熱膨張しやすいため、切削中の熱が変形の原因となることがあります。特に大きな部品や複雑な形状の場合、熱膨張による変形を防ぐために、冷却剤を十分に使用し、加工時間を短縮することが求められます。また、加工時の機械の剛性やフィクスチャーの安定性も重要です。
以上の注意点を踏まえて、ステンレス鋼の切削加工を行うことで、効率的かつ高精度な加工を実現することができます。切削条件の最適化や適切な工具、冷却剤の選定により、ステンレス鋼加工の課題を克服できます。
ステンレス加工の材料選択
ステンレス鋼はその特性から多くの産業で広く使用されていますが、加工時には適切な材料選択が非常に重要です。材料の選定によって、加工の効率や品質が大きく左右されるため、正しい材料選択が求められます。以下では、材料選択の重要性とともに、SUS430の加工適性や他のステンレス鋼との比較について解説します。
材料選択の重要性
材料選択は、製品の性能、コスト、加工性に直接影響を与えます。特に、ステンレス鋼のような高合金鋼を使用する場合、特性に応じた選定が必要です。加工においては以下の要素を考慮することが重要です。
- 機械的特性
材料の強度や硬さは、加工方法や工具の選定に影響を与えます。例えば、強度が高い材料は切削が難しくなるため、適切な工具や加工条件が必要です。 - 耐食性
ステンレス鋼は優れた耐食性を持つため、腐食環境下で使用される部品に適しています。耐食性が求められる環境に適した材料選定が必要です。 - 加工のしやすさ
材料の加工性(切削性、溶接性、成形性)は生産性やコストに大きく関わります。加工が難しい材料を使用すると、加工時間が長くなり、コストが増大します。
SUS430の加工適性と適用例
SUS430は、フェライト系ステンレス鋼であり、比較的安価で加工がしやすい材料です。その特性から、以下のような適用例があります。
- 加工適性
SUS430は、比較的硬度が低く、他のオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)よりも加工が容易です。切削性が良く、精密な加工が可能です。しかし、強度が高くないため、過酷な使用環境や高負荷には不向きです。 - 適用例
SUS430は主に、家庭用機器や厨房機器、装飾品、車両部品などで使用されます。耐食性は良好ですが、塩水などの強い腐食環境下では使用が制限される場合があります。また、耐酸性が求められる環境にも使用されることが多いです。
他のステンレス材料との比較
SUS430はフェライト系ステンレス鋼ですが、他のステンレス鋼材料(例えばSUS304やSUS316)と比較することで、適材適所の選定が可能となります。
- SUS304との比較
SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼で、非常に優れた耐食性を持つため、化学プラントや食品加工業界などでよく使用されます。しかし、SUS304はSUS430に比べて加工が難しく、コストも高くなる傾向があります。SUS430は加工性が良く、コストパフォーマンスも高いため、耐食性がそれほど厳しくない用途に適しています。 - SUS316との比較
SUS316はSUS304よりもさらに高い耐食性を誇ります。特に塩水や海水環境に強いため、海洋や化学プラントなどの過酷な環境で使用されます。しかし、SUS316はSUS430よりも硬度が高く、加工が難しくなるため、コストも上昇します。SUS430は、これらの材料に比べて比較的低コストであり、特定の用途において優れた選択肢となります。 - SUS410との比較
SUS410はマルテンサイト系ステンレス鋼であり、耐食性は劣りますが、硬度が高く、耐摩耗性に優れています。SUS430はSUS410に比べて耐食性が高いため、一般的な環境での使用にはSUS430の方が適しています。ただし、高温や機械的負荷がかかる環境では、SUS410の方が適している場合もあります。
材料選定を行う際には、用途に応じた最適な選択をすることが、加工効率や製品の性能に大きな影響を与えます。SUS430は、その加工のしやすさとコストパフォーマンスから、多くの分野で利用されていますが、使用環境や要求される特性に応じて、他のステンレス鋼との比較を行うことが重要です。
ステンレス成形と加工方法
ステンレス鋼は高い強度、耐食性、耐熱性を持つため、多くの産業で利用されていますが、その加工方法には特有の注意点があります。特に、成形加工は材料の特性に大きく影響されるため、適切な成形方法を選択することが非常に重要です。以下では、ステンレス成形の種類、SUS430の成形性、加工方法による品質の違いについて詳述します。
成形加工の種類と特徴
ステンレス鋼の成形加工にはさまざまな方法があり、それぞれの特性に応じて適切な技術を選ぶことが求められます。代表的な成形加工方法は以下の通りです。
- プレス加工
プレス加工は金属を型に合わせて圧力をかけて成形する方法で、主に板金加工に用いられます。ステンレス鋼を使用する際には、素材の強度に応じたプレス力が必要であり、特に厚板のプレス加工は非常に高い圧力が要求されます。プレス加工は高効率で大量生産が可能ですが、金型の精度やプレス圧の設定が重要です。 - 深絞り加工
深絞りは、円形の金属板を深く押し込んで、立体的な形状を作る加工方法です。特に複雑な形状の部品を作る際に用いられます。ステンレス鋼の場合、絞り加工においては、材料の伸びが小さく、破裂しやすいため、適切な潤滑剤や加熱処理を行う必要があります。 - ホットフォージング(鍛造)
ホットフォージングは、高温下で金属を圧縮し、目的の形状に成形する方法です。ステンレス鋼のような硬い金属に対しては、加熱を行うことで成形性を向上させることができます。特に高温での鍛造は、材料の硬度を低下させることができるため、加工が容易になります。 - 冷間圧延
冷間圧延は、常温またはそれに近い温度で行う圧延加工です。この方法は、材料の強度を向上させることができますが、加工には高い精度が求められます。ステンレス鋼の冷間圧延では、冷間加工による硬化が進むため、切削加工などの後工程に影響を与えることがあります。
SUS430の成形性
SUS430はフェライト系ステンレス鋼であり、一般的にオーステナイト系ステンレス鋼よりも成形性が優れています。以下はSUS430の成形性に関する特長です。
- 成形性の良さ
SUS430は、フェライト系であるため、比較的加工がしやすいという特長があります。特に、プレス加工や深絞り加工においては、他のステンレス鋼に比べて材料の伸びが良く、割れやひび割れが少ない傾向にあります。これにより、複雑な形状を作る際に有利です。 - 加工硬化の影響
ただし、フェライト系ステンレス鋼は、加工が進むと硬化が早いという性質を持ちます。冷間圧延や深絞り加工では、材料が硬化しやすいため、加工の際には適切な加熱や潤滑が必要です。加工硬化を防ぐためには、温度管理を徹底することが重要です。 - 耐食性
SUS430は耐食性が高いものの、オーステナイト系に比べるとやや劣ります。特に、塩水や強い酸性環境では耐食性が低くなるため、加工後の仕上げや表面処理が重要となります。成形時にクラックが入らないように、慎重な加工が求められます。
加工方法による品質の違い
ステンレス鋼の加工方法によって、最終的な製品の品質に大きな違いが生じることがあります。以下に代表的な加工方法による品質の違いを挙げます。
- プレス加工
プレス加工は大量生産に適していますが、精度が求められる場合は金型の精度が大きく影響します。プレス加工時に発生する変形やひずみは、後の加工や組み立て工程に影響を及ぼすことがあります。また、プレス加工後の表面仕上げが不十分だと、製品の耐食性が低下する可能性があります。 - 深絞り加工
深絞り加工では、ステンレス鋼のように硬度の高い金属を絞る際に、金属の伸びや収縮が制御されなければなりません。材料が割れるリスクを防ぐために、温度や潤滑剤の選定が重要です。適切に管理された深絞り加工によって、高精度で耐久性の高い製品が得られます。 - ホットフォージング
高温での鍛造加工は、ステンレス鋼のような硬い金属に適しています。高温で成形することで、材料が軟化し、より精密な形状を作ることができます。しかし、過度な加熱は材料の成分に影響を与え、耐食性や強度が低下する恐れがあります。したがって、適切な温度管理と加熱時間が重要です。 - 冷間圧延
冷間圧延は、材料の強度を高める効果がありますが、冷間加工による硬化が進行するため、加工が難しくなります。冷間加工されたステンレス鋼は、特に後工程の切削や仕上げにおいて注意が必要です。適切な圧延条件と後処理を施すことで、高精度の製品が得られます。
加工方法による品質の違いを理解し、適切な方法を選定することで、より高品質な製品を生産することができます。特にSUS430のようなステンレス鋼を使用する際には、その成形性や加工特性を最大限に活かす方法を選ぶことが重要です。
SUS430ステンレス加工のための最適切削条件ガイド
SUS430ステンレス鋼はフェライト系のステンレス鋼であり、耐食性や耐熱性が求められる環境で多く使用されます。しかし、硬度や加工の特性が他の金属と異なるため、適切な切削条件を選定することが重要です。以下では、SUS430ステンレス鋼を加工する際の最適な切削条件に関するガイドを示します。
切削工具の選定基準
SUS430ステンレス鋼の切削には、特に切削工具の選定が重要です。適切な工具を使用することで、加工精度を保ちながら、工具の寿命を延ばすことができます。切削工具を選定する際には、以下のポイントを考慮することが推奨されます。
- 工具の材質
SUS430は硬度が高く、加工時に工具が摩耗しやすいため、高耐摩耗性を持つ工具材を選定することが重要です。一般的には、コバルト含有超硬工具やセラミック工具、CBN(立方晶窒化ホウ素)工具などが選ばれます。これらの工具は高温にも耐え、鋼材を効果的に切削できます。 - 工具形状の選定
SUS430の加工には、適切な工具形状も重要です。切削の際に発生する熱や圧力を分散させるため、適切なコーナー半径と切れ味の良いエッジが求められます。また、切削加工における切りくずの排出を円滑にするため、工具の形状やチップ角度も考慮する必要があります。 - 工具のコーティング
ステンレス鋼の加工時には、工具の耐久性を向上させるためにコーティングが重要です。TiN(窒化チタン)やTiAlN(窒化アルミニウムチタン)などのコーティングが、工具の摩耗を防ぎ、長寿命化を図ることができます。また、コーティングにより切削熱を効果的に逃がすことができ、熱変形を防止します。
加工工程の最適化
SUS430の加工工程を最適化するためには、切削条件を適切に設定し、効率的に加工を進める必要があります。以下の要素を調整することで、加工効率を向上させることが可能です。
- 切削速度(Vc)の設定
SUS430の切削速度は、一般的に30〜80 m/minの範囲で設定されます。切削速度が速すぎると、工具の摩耗が早くなり、過度な熱が発生して加工面にダメージを与える可能性があります。逆に遅すぎると切削効率が悪化し、加工時間が長くなります。最適な切削速度を選定することが重要です。 - 送り速度(f)の設定
送り速度は、切削工具が1回転するごとに進む距離を決定します。一般的には、0.05〜0.2 mm/revが適切とされています。送り速度が速すぎると、切削工具の切れ味が悪化し、加工面に傷がつきやすくなります。適切な送り速度を設定することで、加工精度を確保できます。 - 切削深さ(ap)の設定
切削深さは、1回の切削で取り除く材料の深さを示します。SUS430のような硬度の高い材料では、過度な切削深さを設定すると工具に過剰な負荷がかかり、摩耗が早まります。一般的には、0.5〜2.0 mmの範囲で設定することが推奨されます。 - 冷却の重要性
SUS430は切削時に高温になるため、適切な冷却が必要です。冷却剤としては、水溶性冷却剤やオイル冷却剤を使用することが多いです。冷却剤を使用することで、加工中の温度上昇を抑え、工具の寿命を延ばし、加工面の品質を向上させることができます。
切削条件の事例紹介
以下に、SUS430ステンレス鋼の切削加工における具体的な切削条件の事例を紹介します。
- 事例1: フライス加工
切削工具:コバルト含有超硬工具
切削速度(Vc):50 m/min
送り速度(f):0.12 mm/rev
切削深さ(ap):1.0 mm
冷却:水溶性冷却剤
この条件で加工すると、切削中の温度が適切に保たれ、良好な表面仕上げが得られるとともに、工具の摩耗を抑えることができます。 - 事例2: 旋盤加工
切削工具:TiAlNコーティング超硬工具
切削速度(Vc):70 m/min
送り速度(f):0.15 mm/rev
切削深さ(ap):1.5 mm
冷却:オイル冷却剤
この条件では、SUS430の旋盤加工において、精度の高い加工が可能であり、加工中の温度上昇を抑制して工具の寿命を延ばすことができます。 - 事例3: 面取り加工
切削工具:セラミック工具
切削速度(Vc):40 m/min
送り速度(f):0.08 mm/rev
切削深さ(ap):0.8 mm
冷却:水溶性冷却剤
面取り加工においても、冷却剤の適切な使用が重要です。この条件では、面取り面に傷がつくことなく、高精度な仕上げが得られます。
SUS430の切削加工においては、切削条件を適切に選定し、加工に適した工具を使用することで、品質を確保しながら生産効率を向上させることができます。各条件を実践的に調整し、最適な切削条件を導き出すことが求められます。