ハステロイとステンレスの違いを徹底比較|用途・耐食性・選び方ガイド

ハステロイとステンレスの違いを徹底比較|用途・耐食性・選び方ガイド

化学プラントや海洋機器などで使用される金属素材の中でも、ハステロイとステンレスは耐食性の高さでよく比較されます。しかし「どちらを選ぶべきか」「どう違うのか」が分かりづらいという声も多いです。本記事では、両者の性質や用途の違いを、実務で役立つ視点からわかりやすく解説します。

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目次

ハステロイとは何か|ニッケル基合金の代表格

ハステロイ(Hastelloy)は、アメリカのHaynes社が開発したニッケル基耐食合金で、塩酸や硫酸などの強酸にも耐える特性を持っています。主成分はニッケル(Ni)で、これにモリブデン(Mo)やクロム(Cr)が添加されています。

主成分 特徴
Ni(ニッケル) 高い耐酸性・高温強度
Mo(モリブデン) 耐孔食性を向上
Cr(クロム) 酸化被膜を形成し耐酸化性を付与
表:ハステロイの主要成分と役割

ハステロイは、特に塩酸・硫酸・リン酸・有機酸などが存在する過酷な環境で使用されます。化学装置、反応塔、熱交換器、排ガス処理装置などが代表的な用途です。

さらに詳しい金属成分規格については、JIS(日本産業規格)で化学組成基準が定められています。

ハステロイの代表的な種類

  • ハステロイC-22:高い耐酸化性・耐孔食性
  • ハステロイC-276:酸・塩化物環境に強い代表格
  • ハステロイB-2:塩酸に強く、還元雰囲気に適する
代表的なハステロイの種類

ステンレスとは何か|鉄をベースにした実用的な耐食鋼

ステンレスは鉄(Fe)を主成分とし、クロム(Cr)を10.5%以上含有することで錆びにくくした合金鋼です。ニッケルやモリブデンを添加することで強度や耐食性を調整できます。

一般的なステンレスには以下のような種類があります。

  • オーステナイト系(例:SUS304, SUS316)
  • フェライト系(例:SUS430)
  • マルテンサイト系(例:SUS410)

とくにSUS304とSUS316は代表的な汎用材で、日常生活から工業分野まで幅広く使用されています。これらの比較については、「SUS304とSUS316の違いに関して解説」で詳しく解説しています。

ハステロイとステンレスの主な違い

両者の違いを整理すると、以下のようになります。

項目 ハステロイ ステンレス
主成分 ニッケル基 鉄基
耐食性 非常に高い(強酸・塩化物に強い) 中程度(酸化環境には強い)
価格 非常に高価 比較的安価
加工性 難加工性 良好
用途 化学装置・高温環境 建築・食品・日用品
ハステロイとステンレスの比較表

この表からも分かる通り、ハステロイは過酷な環境下での耐酸性・耐孔食性に優れますが、コストが高いため一般用途ではステンレスが採用されます。

用途別に見る選び方のポイント

両者の特性を理解したうえで、用途別に選ぶ基準をまとめると以下の通りです。

用途環境 推奨素材 理由
塩酸・硫酸環境 ハステロイC-22/C-276 強酸に対する耐性が非常に高い
海水・塩分環境 SUS316 モリブデン含有により耐孔食性が良好
食品機械・建築 SUS304 コストバランスと加工性に優れる
用途ごとの素材選定の目安

よくある質問(FAQ)

Q1. ハステロイとステンレスはどのような環境で使い分けるべきですか?

ハステロイは塩酸・硫酸などの強酸環境に優れ、化学装置や排ガス処理装置など過酷な条件で使用されます。一方、ステンレスは酸化雰囲気や海水環境に強く、食品機械や建築用途に向きます。

Q2. ハステロイの主な種類と特徴にはどのような違いがありますか?

ハステロイにはC-22、C-276、B-2などがあり、C-22は耐孔食性、C-276は酸や塩化物環境への耐性、B-2は塩酸に強い特性を持ちます。

Q3. ステンレスの中で最も汎用的に使われるグレードはどれですか?

一般的にはSUS304SUS316が最も広く使用されています。SUS304は加工性とコストバランスに優れ、SUS316はモリブデンを含むことで耐孔食性が高いです。

まとめ|違いを理解して最適な素材を選ぶ

ハステロイとステンレスの違いをまとめると以下のようになります。

  • ハステロイ:強酸・高温環境に強いが高価で難加工性。
  • ステンレス:コストと加工性に優れ、一般用途に適する。

化学的安定性が求められる環境ではハステロイを、経済性と汎用性を重視する場合はステンレスを選択するのが基本です。どちらが優れているかではなく、「どの条件で最適か」を理解することが重要です。

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