ステンレスとスチールの違いを徹底解説|材質特性・用途・加工の選定ポイント

ステンレスとスチールの基本的な違い
まず、両者の基本的な違いを押さえましょう。スチールは鉄(Fe)に炭素を加えた合金で、古くから建築や機械構造に使われてきました。加工性や強度に優れるため、コストを抑えつつ耐久性を確保できる点が特徴です。ステンレスは鉄をベースにクロム(Cr)やニッケル(Ni)を添加した合金で、耐食性や耐熱性、清掃性に優れ、食品・医療機器など衛生面が重要な分野で多く使用されます。
| 項目 | スチール | ステンレス |
|---|---|---|
| 主成分 | Fe + C(炭素鋼の場合) | Fe + Cr 10〜20% + Ni 0〜10% + 他元素 |
| 耐食性 | 低い(錆びやすい) | 高い(クロムにより表面に酸化被膜形成) |
| 耐熱性 | 500℃程度まで | オーステナイト系で870℃程度まで使用可能 |
| 磁性 | あり | オーステナイト系は非磁性、フェライト・マルテンサイト系は磁性あり |
| 硬度 | 150〜200HB程度 | 150〜250HB程度(鋼種により変動) |
| 加工性 | 良好 | 鋼種による(オーステナイト系は加工硬化しやすい) |
両者の違いを理解することは、用途別に適切な材料を選定する際の基本となります。鋼種別の特性に関して解説で詳しく解説しています。
化学組成の違いによる性能差
化学組成の差は、材料性能に直結します。スチールは鉄に炭素を加えるだけですが、炭素含有量によって硬度や引張強度、溶接性が変化します。高炭素鋼は硬度が高く摩耗に強い反面、割れやすく溶接性が低下します。
一方、ステンレスはクロムの酸化被膜により耐食性が高く、ニッケル添加で延性や耐熱性を向上させています。さらにモリブデン(Mo)を添加することで、海水など腐食性の高い環境でも耐孔食性を確保できます。用途に応じて適切な鋼種を選定することが製品寿命やメンテナンス頻度に大きく影響します。
用途別材質選定のポイント
用途に応じた材質選定は製品の耐久性や安全性を左右します。以下に主要用途と選定理由をまとめました。
| 用途 | 推奨材 | 選定理由 |
|---|---|---|
| 建築・構造物 | スチール(炭素鋼)、ステンレス一部 | コストと強度重視。腐食環境ではステンレスを併用 |
| 食品機器・医療機器 | ステンレス(SUS304/SUS316) | 耐食性・耐熱性・清掃性が重要 |
| 電子機器部品 | ステンレス、スチール(特殊鋼) | 寸法安定性、耐熱性、磁性制御の必要性 |
| 自動車部品 | スチール(鋼板)、ステンレス(排気系) | 耐熱性・耐摩耗性・コストバランス |
| 屋外設備・橋梁 | ステンレス(耐候性高いフェライト系) | 長期耐食性、メンテナンス頻度低減 |
加工性の違いと注意点
切削加工
スチールは加工硬化が少なく切削条件の幅が広いため、加工性に優れています。ステンレスはオーステナイト系鋼種の場合、加工硬化が起こりやすく刃具摩耗も早いため、低速切削や冷却液の使用が必須です。また、長尺部材や精密部品では加工順序や段取りによって寸法精度が変わるため、事前に加工計画を立てることが重要です。
- 切削速度: オーステナイト系は15〜30m/min、スチールは50〜100m/min程度
- 送り速度: 0.05〜0.2mm/rev、加工精度に応じて調整
- 切込み深さ: 材料の厚みと熱伝導率に応じて調整
溶接加工
スチールは一般的なアーク溶接で対応可能ですが、高炭素鋼は割れ防止の前加熱が必要です。ステンレスは熱影響で耐食性が低下する場合があり、適切な溶接材料と手順選択が不可欠です。フェライト系は高温割れに強く、オーステナイト系はひずみや変形に注意が必要です。
メンテナンスと長期使用上のポイント
ステンレスは耐食性が高くメンテナンスが容易ですが、酸性や塩分環境では表面の酸化被膜が損なわれることがあります。一方、スチールは錆びやすいため、防錆塗装や定期メンテナンスが必須です。使用環境に応じた材質選定が長期使用でのコスト削減につながります。
よくある質問
まとめ
ステンレスとスチールは外見は似ていますが、化学組成、耐食性、耐熱性、加工性、用途で大きく異なります。用途に応じた材質選定を行うことで、製品寿命の延長、加工トラブル回避、メンテナンス効率化が可能です。本記事では、材質別特性、用途別選定ポイント、加工上の注意点まで徹底解説しました。正しい知識を持つことで、安全性と効率性を両立した設計が可能です。




