SUS444とは?成分・特性・代表用途までわかる完全ガイド
「SUS444とは何か?」と調べているあなたへ。SUS444はフェライト系ステンレスの一種で、モリブデン(Mo)を添加して耐食性を高めた材料です。給湯器、熱交換器、排気系など過酷な腐食環境で採用されることが多く、用途に応じた選定と加工上の配慮が重要になります。本記事では、SUS444の化学成分、物理的・機械的特性、主要用途、加工・溶接の注意点、選定時のチェックリストまで実務に役立つ視点で徹底解説します。
SUS444の基本:化学成分と系統
SUS444はフェライト系ステンレスに分類され、主にクロム(Cr)を多く含み、ニッケルをほとんど含まない設計が特徴です。さらにモリブデン(Mo)を添加することで孔食や応力腐食割れに対する耐性が向上します。JISでの類似規格や成分定義はJIS規格で参照できます。
| 成分 | SUS444(代表) | 役割 |
|---|---|---|
| Cr | ~17〜20% | 不動態皮膜で耐食性向上 |
| Mo | ~1.0%前後 | 孔食・耐硫化性の改善 |
| Ni | ほぼ含まない | 低コスト化と磁性保持 |
物理的・機械的特性
フェライト系の特性として、磁性を有する点、熱膨張係数が比較的小さい点、そして高温での安定性が挙げられます。機械的には一般的なフェライト鋼と同様に、耐熱性・耐酸化性に優れ、溶接後の脆化に注意しつつも構造部材として十分な強度を発揮します。
代表的な数値(参考)
- 引張強度:概ね300〜600MPa(熱処理や冷間加工による変動あり)
- 耐熱温度:用途により200〜800℃域で使用されるが、長期高温では設計注意
- 磁性:あり(工程により磁性の度合いは変わる)
SUS444の代表用途 — なぜその用途に向くのか
SUS444が選ばれる主な理由は耐孔食性と耐硫化性のバランスが良い点です。以下の用途で広く使われています。
| 用途 | 理由・特性 |
|---|---|
| 給湯器・温水配管 | 温水環境での孔食抑制、コストと耐久のバランス |
| 熱交換器 | 耐食と熱疲労に強い、熱膨張差が小さい点が有利 |
| 排気系部品(自動車) | 高温酸化と硫化ガスに対する耐性が求められる |
| 給湯・厨房設備の水回り | 耐食+コスト重視の選定 |
加工性・溶接性:現場で注意すべき点
フェライト系は一般にオーステナイト系よりも加工性がやや劣ります。特に溶接では割れや脆化を避けるための入熱管理や後処理が重要です。SUS444はモリブデン添加により耐食性は上がりますが、次の点に注意してください。
- 溶接の入熱管理:過度な入熱は結晶粒粗大化や局所的な脆化を招くことがある。
- 前後熱処理:必要に応じて応力緩和や焼鈍を計画する。
- 切削加工:適切な工具と切削条件(切削速度を抑え、切りくず処理を良好に)を選定する。
耐食設計のポイント(SUS444を使うときのチェックリスト)
- 使用環境の液性・温度:塩分・塩素イオン濃度や温度が高い場合は追加の耐食対策が必要。
- 接触材の選定:異種金属接触による電食(ガルバニック腐食)に注意。
- 表面仕上げ:表面粗さや仕上げ処理で耐食性が大きく変わる。
- 検査計画:耐食性試験やサンプル長期曝露試験に基づく検証。
SUS444と他鋼種との比較(短期判断表)
| 比較項目 | SUS444 | SUS304 | SUS430 |
|---|---|---|---|
| 耐孔食性 | 高(Mo添加) | 中 | 低〜中 |
| 耐熱性 | 高 | 中 | 中〜高 |
| 加工性 | やや劣る | 良好 | 良好 |
| コスト | 中 | 高 | 低 |
実務での注意:設計者が見落としがちな点
SUS444は性能が高い反面、次のような見落としがちポイントがあります。
- 接触材や締結部の材質組み合わせで局所腐食が発生する可能性。
- 溶接部や加工切粉の除去が不十分だと局所腐食の原因になること。
- 高温長期曝露での微細組織変化(例えばフェライトの粗化)による特性変動。
よくある質問(FAQ)
ステンレス鋼種の特性比較についてはSUS304とSUS430の違いに関して解説で詳しく解説しています。
また、JIS規格の詳細はJISで確認できます。
溶接条件の最適化についてはステンレス溶接のポイントに関して解説で詳しく解説しています。
まとめ:SUS444は「耐食性重視+費用対効果」を求める場面で有効
SUS444はモリブデン添加により耐孔食性・耐硫化性を強化したフェライト系ステンレスです。給湯器、熱交換器、排気系など、耐食性とコストバランスが重要な用途で高い有用性を発揮します。一方で溶接や高温長期使用では設計と工程管理が必要です。本記事はSUS444の選定・設計・加工に役立つ実務的な視点を提供しました。より詳しい規格や成分はJISをご参照ください。





