フェライト系ステンレスとは?特徴・種類・用途を徹底解説|他系統との比較で分かる選び方
ステンレスと一口に言っても、その種類は多岐にわたります。その中でもフェライト系ステンレスは、クロムを主成分とし、磁性を持つことが特徴の金属材料です。この記事では、フェライト系ステンレスの化学的特徴から、代表的な鋼種、用途、オーステナイト系との違い、そして選定時の注意点までを詳しく解説します。
フェライト系ステンレスの基本構造と特徴
フェライト系ステンレスは、主にクロム(Cr)を11.5%以上含有し、オーステナイト系に比べてニッケルをほとんど含まない構造が特徴です。このため、価格が安定しやすく、コストパフォーマンスに優れたステンレスとして広く利用されています。
主な特徴一覧
| 項目 | フェライト系ステンレス |
|---|---|
| 主成分 | クロム(Cr) |
| 磁性 | あり |
| 耐食性 | 中〜高 |
| 耐熱性 | 高 |
| 加工性 | やや劣る |
| コスト | 低〜中 |
特にSUS430が代表的で、建築用パネルやキッチン機器、自動車のマフラーなどに多く使用されます。フェライト系の化学成分や特性は、JISによって詳細に定義されています。
代表的なフェライト系ステンレス鋼種とその用途
フェライト系ステンレスには多くの種類があり、用途に応じて成分が微調整されています。以下は代表的な鋼種とその特徴です。
| 鋼種 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| SUS405 | 溶接性良好、耐酸化性高い | ボイラー部品、熱交換器 |
| SUS409L | 低炭素で耐熱・耐食性良好 | 自動車排気系部品 |
| SUS430 | 代表的な汎用材、加工性良好 | 家庭用シンク、家電外装 |
| SUS444 | モリブデン添加で耐食性強化 | 給湯器、水回り設備 |
オーステナイト系・マルテンサイト系との比較
ステンレス鋼は大きく分けて以下の3系統に分類されます。
- フェライト系:磁性あり、低コスト、耐食性中〜高
- オーステナイト系:非磁性、加工性良好、耐食性最高
- マルテンサイト系:強度が高く、耐摩耗性に優れる
フェライト系は、オーステナイト系に比べ熱膨張係数が小さく、熱疲労に強いという利点があります。この点は、高温環境で使用される部品設計において重要です。
フェライト系とオーステナイト系の比較表
| 特性 | フェライト系 | オーステナイト系 |
|---|---|---|
| 磁性 | あり | なし |
| 耐食性 | 中〜高 | 非常に高い |
| 耐熱性 | 高い | 中〜高 |
| 加工性 | やや劣る | 優れる |
| コスト | 低 | 高 |
また、フェライト系の溶接には特有の注意点があり、溶接割れを防ぐためには適切な入熱管理が必要です。この点については「ステンレスの溶接技術に関して解説」で詳しく解説しています。
フェライト系ステンレスを選ぶ際のポイント
フェライト系を選定する際は、次の3つの観点が重要です。
- 環境条件:塩分や酸性環境ではモリブデン添加鋼種を選択。
- 加工条件:プレス加工にはSUS430など汎用材が適する。
- コスト要件:ニッケルフリーで価格変動の影響を受けにくい。
これらを考慮することで、用途に最も適した鋼種を選定することができます。
よくある質問(FAQ)
フェライト系の選定基準については、フェライト系ステンレスの選び方に関して解説で詳しく解説しています。
また、成分基準の詳細はJIS G 4305(参考: JIS)をご確認ください。
これらの系統比較については、ステンレスの種類比較に関して解説で詳しく解説しています。
コスト比較や材質ごとの価格傾向は、ステンレスコスト比較に関して解説で詳しく解説しています。
参考規格はJIS G 4305(参考: JIS)をご確認ください。
まとめ
フェライト系ステンレスは、コストと耐食性のバランスに優れた実用材料です。磁性や熱膨張の特性を活かせる分野では非常に有用であり、建築、自動車、家電など幅広い分野で使用されています。





